アメリカの大統領の公式行事で移動する際、その姿を見ることができる豪華なリムジン。その名も「ビースト」ことキャデラック・ワン。オバマ元大統領時代より、アメリカ大統領の来日の折に注目を浴びるこの車両。
G7首脳会議(広島サミット)と日米豪印首脳会合(クアッド)の参加のため訪日したジョー・バイデン大統領とともに登場し、あらためて注目が集まっています。この車両はただのリムジンではなく、大統領の安全を守るために多くの特殊装備が施されています。今回はビーストの驚きの装備と歴史について解説します。
目次
ビースト(キャデラック・ワン)の特徴と驚きの装備
ビーストとは、アメリカ大統領専用車「キャデラック・ワン」の通称です。大統領専用機が「エアーフォース・ワン」、大統領専用ヘリが「マリーン・ワン」とアメリカ大統領の乗り物にはすべて「ワン」が付くことから、キャデラックをベースにしたこの専用車も「キャデラック・ワン」と呼ばれています。
その迫力のある車体と、外敵からアメリカ大統領を守るさまざまな装備から、アメリカ大統領シークレットサービスが地球上で最強の獣「ビースト(the beast)」の愛称で呼ぶようになり「ビースト」の名前が定着しました。
アメリカ大統領専用車、ビーストの特徴は堅牢さと最先端の技術による安全性にあり、一般的な車両を遥かに凌駕する防護装備を備えています。
まずは、ビーストの外壁と窓ガラスは高度な防弾性能で、ドアの厚さは約20cm、窓ガラスは約13cmにも及び、ほとんどの銃弾や爆発にも耐えることができます。また、総重量は驚きの約8トン。その重量から最高速度は約100kmほどと言われています。タイヤにはケブラー補強されたランフラットタイヤを採用。仮に銃撃でパンクしゴムがなくなってしまっても、リムだけで100km以上の移動が可能です。
さらに、ビーストにはテロ対策として、催眠弾やショットガンのような銃火器をはじめ、暗闇でもライトなしで走行できる暗視スコープを搭載し、大統領はほぼあらゆる危険から身を守られています。
ビーストの内部もまた、大統領の安全を確保するために特別な設計がされています。
バイオテロ対策として、車内は完全に密閉されたうえで常に空気が循環清浄されており、生物化学兵器から大統領を保護することが可能。また、酸素供給設備のほか、大統領の血液型と同じ輸血パックを常備しており、大統領が万が一、銃撃や爆発に巻き込まれケガを負ってしまったときに医療対応もできます。
このように、ビーストはただ移動するだけの車両ではなく、大統領を守るための「移動要塞」「シェルター」とも言える存在なのです。
アメリカ大統領専用車の歴史
大統領専用車の歴史は、アメリカの大統領が存在する限り続いています。初期の大統領専用車は、普通の自動車と大差ありませんでしたが、時代とともに技術が進化し、現在のビーストのように堅牢かつ重装備な車両となりました。
ビースト(キャデラック・ワン)の前身と初の登場
大統領専用車の歴史は、1910年代にウィリアム・タフト大統領がホワイトハウスに初めて自動車を導入したところから始まります。しかし、初期の大統領専用車は防弾などの装備を持つほどの特殊性はありませんでした。
実際にビーストと呼ばれる車両が公式に登場したのは、2009年に就任したバラク・オバマ大統領の時代です。その堅牢さと搭載する特殊機能や重装備から「ビースト」と呼ばれ、以降、大統領専用車の代名詞となりました。
また、ビーストの直接の先代モデルは、「DTS プレジデンシャル リムジン」と呼ばれる車両で、ジョージ・W・ブッシュ大統領が使用していました。この車両も、防弾ガラスや装甲など、大統領の安全を確保する装備を備え、最高速度は現行車の倍以上の時速243kmと大統領専用車最速を誇っています。
ビースト(キャデラック・ワン)の進化
ビーストの前身である大統領専用車は、初期の頃は防弾性能などの安全性に重きを置いていませんでした。しかし、1963年のジョン・F・ケネディ大統領の暗殺事件以降、大統領の安全性を確保するための装備が重視されました。
最新のビーストは、2016年オバマ大統領からドナルド・トランプ大統領に代わってから、セキュリティ強化のため、約17億円以上かけてアップデートされた車両です。
通常、ビーストは大統領が海外を訪問する際にも同行し、その場所での大統領の移動手段となります。トランプ大統領の訪日時にもその堅牢さと威圧感を放つ姿がテレビなどで大きく取り上げられ、存在感を改めて日本国民に印象付けました。
ビースト(キャデラック・ワン)の製造過程
ビーストは、アメリカの自動車メーカーであるゼネラル・モーターズ(GM)社が製造しています。
車体サイズは全長が約5.5m、全高が約1.8m程度、エンジンにはディーゼルエンジンを搭載しているなど、一部憶測も含めた情報が飛び交っていますが、その構造は最高機密とされており、一部メディアの報道でわずかながら公開されているのみです。
それでも、それら情報から一般的な自動車と比べて数倍の製造時間とコストがかかっていることがわかります。
ビースト(キャデラック・ワン)の運用とメンテナンス
ビーストの運用は、アメリカのシークレットサービスが担当し、大統領が移動する際には、通常2台のビーストに多数の護衛車両がエスコートします。また、ビーストが使用されていないときも24時間体制で厳重に監視され、常に最高の状態を保っています。
ビースト(キャデラック・ワン)の存在意義
ビーストは、ただの移動手段ではありません。アメリカ大統領の命を守る役割を持つだけでなく、アメリカの力を象徴する存在でもあります。その防弾性能や多くの特殊装備は、大統領の安全を確保するためとアメリカの技術力を示すものともいえます。
また、ビーストは大統領の公式行事で必ずといっていいほど登場します。これは、大統領の存在を国民に示すと同時に、その安全を守る姿勢を示すことで、国民の信頼を得るためでしょう。
まとめ
ビースト(キャデラック・ワン)は、アメリカ大統領の移動手段であり、大統領の安全を守るための特殊装備を多数持つ特殊な車両です。
その存在は、アメリカの技術力を示すとともに、大統領の存在とその安全を確保する姿勢も示してます。今後のビーストの進化に注目していきましょう。
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