昨今では、みなさんもご存じの通り、各企業が脱炭素社会に向けて様々な取り組みを行っています。
自動車業界では、100年に一度の変革と言われる時代へ突入し、多くの自動車メーカーが電動化へ向け舵を切っています。
現在は、大排気量エンジンを積んだ車は少なく、ダウンサイジングターボやハイブリッド、EV車など、環境性能を高めた車へと大きな変化を見せている最中で、ご存じの方も多いかと思いますが、ガソリン車廃止を促す動きが世界各国で進んでいます。
廃止する予定時期はいつなのか?今後の自動車はどうなっていくのか?気になるガソリン車の行方について、現時点の状況を解説します。
目次
ガソリン車はなぜ廃止に?
そもそも、ガソリン車が廃止されるのは、なぜなのでしょうか。
一言でいえば、地球環境のため。近年のゲリラ豪雨や夏の酷暑、台風の大型化など異常気象が続く原因として、地球温暖化が挙げられています。
この問題を解決するための手段として、CO2削減が掲げられました。エンジンで走る車には、ガソリンが使用されています。もちろんガソリンを燃やすことで、車は動力を得て走るのですが、それと同時にCO2が排出されてしまいます。
車は、私たちの生活にとって欠かせないモノでもあるために、世界中で多くの人が使用する分、CO2の排出も多くなります。
そこで打ち出されたのが、カーボンニュートラル(脱炭素)でした。これは、2015年にパリで開かれた温室効果ガスに対する国際的な会議にて制定されました。(パリ協定)
現在は、各国で定められた環境基準を満たしたガソリン車であれば、世に送り出すことができますが、いずれはCO2排出「ゼロ」、つまりガソリン車を廃止しようとする動きが世界の流れとなっているのです。
もちろん自動車業界だけではなく、エネルギーを使って製品を生み出す製造業、さらにいえば、電気やガスなどを使って生活する私たちにも課せられた義務でもあります。
今、世界は環境を意識した取り組みを重要視している、その一環としてガソリン車廃止の取り組みがあるということです。
ガソリン車廃止予定時期
一番気になるガソリン車廃止時期についてですが、各国によって差はあるものの、米国や欧州をはじめ中国などでも、2030年〜2040年にかけてガソリン車廃止する方針を明らかにしています。
日本においても、2020年10月に「2050年カーボンニュートラル」を目指すことを宣言。その中に「2035年までに新車販売で電動車100%を実現する」と明記されたため、2035年前後には、ガソリン車の新車の販売が禁止されるという報道がされました。現状の世界各国におけるガソリン車販売期間を見てみましょう。
米国(アメリカ)
アメリカでは、各州によってガソリン車廃止時期が異なる可能性はありますが、カリフォルニア州、ニューヨーク州において2035年までにガソリン車の販売禁止とすることが決定されました。
>ガソリン車には、ディーゼル車の他ハイブリッド車も該当しており、ガソリンを利用する車の販売がほぼできなくなります。ただし、プラグインハイブリッド車については販売継続可能です。
規制後に販売できる車は、電気自動車、燃料電池車、プラグインハイブリッド車となります。
欧州連合(EU)
ガソリン車規制に一番厳しい欧州では、2035年にガソリン車を販売禁止とすることが合意されています。EUでは、ガソリン車(ディーゼル車含む)の他、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車も販売禁止となる見込みです。
ガソリンを用いた自動車販売が実質禁止となることから、電気自動車や燃料電池車の販売となりそうです。
日本
日本においては、2030年代にガソリン車の新車販売をゼロにするという目標が掲げられています。
自治体によって若干のズレはありますが、東京都においては2030年までにガソリン車の新車販売ゼロという方針が立てられていることから、やはり2030年というのがひとつの目安時期になりそうです。
日本においては、ハイブリッド車の新車販売も継続するようなので、規制後はハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、電気自動車、燃料電池車の販売となる見込みです。
ガソリン車廃止のメリット・デメリット
今まで長く愛されてきたガソリン車を廃止することによるメリットとは何でしょうか?
また、ガソリン車が廃止されることで、どんな影響をおよぼすのか、チェックしてみましょう。
メリット
ガソリン車の廃止によるメリットはなんといっても環境への影響でしょう。
従来のガソリン車やディーゼル車は、CO2を含む排気ガスを排出して走行します。しかも、世界中で多くの方が使っているので、その量は膨大です。
これが電気自動車などに置き換わることで、こうした排気ガスがゼロとなり、環境への負担を軽減できます。
また、みなさんもご存じのとおり、電気自動車はモーターで走行することから非常に静か。騒音や振動の低減においても、一定以上の効果が期待できます。
深夜に住宅地を走行する際などでも、騒音を気にせず、ストレスなく走行できます。
地球環境のみならず、生活環境においてもメリットが大きいでしょう。
デメリット
では、逆にデメリットを考えてみましょう。
現状における大きなデメリットは、電気自動車を充電するスポットの不足です。
ガソリン車であれば、外出時の給油に困ることも少ないですが、充電スポットについては、近年増設しているとはいえ、まだまだ不足している感が否めません。
また、給油は数分で完了しますが、充電は急速充電設備でも30分程度かかるので、混雑した場合には待ち時間がでることも予想されます。
長距離ドライブの際には、充電スポットのチェックや時間なども考慮して移動しなければなりません。
さらに、ガソリン車が好きな方にとって、とくに物足りなさを感じるのは、エンジン音や振動がないことではないでしょうか。
電気自動車は静粛性が高いので、ガソリン車に比べると走る楽しみがどうしても少なくなってしまうようです。
価格についても、ガソリン車に比べ、電気自動車はまだまだ割高でなかなか手を伸ばしにくい価格ではあります。
今後、電気自動車へシフトしていくことで、価格面もリーズナブルになることを期待したいですね。
ガソリン車廃止後の主力となる動力を紹介
現在販売されている自動車においての動力は、ガソリン車、ディーゼル車、電気自動車(EV)、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車(PHEV)、燃料電池車(FCV)などです。
今後、ガソリン車が廃止された際に活躍するであろう動力(パワートレイン)を紹介していきます。
BEV(電気)
各メーカーが現在一番力を注いでいるのがEV車です。
ちなみに、EV車は電気を動力にしている車を表しているので、ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車、燃料電池車(FCV)も含まれています。そのため、電気のみの車は正式にはBEV車と呼びます。
BEV車はバッテリーに蓄えた電気を利用し、モーターを駆動して車を動かすため、排出されるものはなく環境に優しい自動車なのです。
代表的な車種として日産 リーフやトヨタ bZ4x、MercedesBenz EQシリーズなどがあります。
ハイブリッド
みなさんに最も馴染みのあるエコカーといえば、ハイブリッド車ではないでしょうか。
ハイブリッド車は、エンジンとモーターを利用して走行します。低速域ではモーター、加速時などにエンジン+モーター、高速域ではエンジンといったように、走行シーンによってエンジンとモーターを使い分けることで、ガソリン使用量を削減しています。
ハイブリッド車は、上記説明のようにガソリンを使用しています。アメリカやEUではハイブリッド車も販売禁止対象とされている一方、日本では電動車に含むとされていることから、ハイブリッド車の販売は継続される見込みです。
ハイブリッド車の代表車としては、トヨタ プリウス、レクサス UX250h、日産 セレナなどがあります。
PHEV(プラグインハイブリッド)
ハイブリッド車に、外部充電機能が備わった車がプラグインハイブリッドです。
BEV車のように充電することができ、電気のみで走行することができます。また、ハイブリッド車同様、充電がなくなってもガソリンを用いて走行することができるため、電気自動車の不安を払拭できるモデルです。
日本においては、プラグインハイブリッド車の販売は継続される見込みです。
プラグインハイブリッド車の代表として、トヨタ プリウスPHEV、三菱 アウトランダーPHEV、BMW 330eなどがあります。
アメリカでは今のところプラグインハイブリッド車はOKとなっていますが、欧州ではプラグインハイブリッド車の販売も禁止されるようなので、プラグインハイブリッド車も今後規制対象となる可能性が捨てきれません。
FCV(燃料電池)
FCV車とは燃料電池車のことで、水素を燃料としています。そのため、ガソリンは一切使用しておらず、排出されるのは水(水蒸気)のみなので、環境性能が高い車です。
ガソリン車並の走行距離を確保しながら、水素補給はガソリン給油と同程度の時間で可能なので、充電に時間のかかる電気自動車と比べると大きなメリットといえるでしょう。
現在は、水素ステーションが少ないので不便さはありますが、インフラが整備されると電気自動車並の需要になるかもしれません。
価格も高く、課題は多いですが、将来の主要動力となるポテンシャルは秘めていると感じます。
代表的な車種としては、トヨタ MIRAIが有名です。
国産自動車メーカーの動向
国産自動車メーカー代表ともいえるトヨタ自動車では、2020年代に電気自動車を10種類以上ラインアップするよう動いております。現在個人で所有可能な電気自動車はbZ4x、レクサスではUX300eの2種類です。他国産メーカーにおいても1〜3種類で、海外メーカーと比較すると、まだ電気自動車の種類は少ないのが現状です。
トヨタ自動車社長は、電動化するにあたって次のように述べています。
「国のエネルギー政策に手を打たないと、自動車業界のビジネスモデルが崩壊する」
つまり、自動車メーカーだけの努力では、カーボンニュートラル目標達成は無理があり、国が主体となって動く必要があります。
充電ステーションといったインフラ整備に加え、昨今では電力不足が度々問題となっています。直近では、電気自動車に置き換わることによる税収減についても議論されていますね。
大きな変革となるため、自動車メーカーと国が手を取り合い、目標達成に向けて根気よく取り組んでいくことが必要です。
まとめ
ガソリン車の販売が禁止されるまで残り10数年となりました。
現在はガソリン車が便利なように、今後は電気自動車が便利な世の中になっていくのでしょう。
電気自動車の普及が進めば、購入時の補助金などの制度もなくなる可能性があるので、今のうちに補助金を利用して電気自動車を購入するのも選択肢のひとつかと思います。
ガソリン車に乗れなくなるのは残念ですが、各自動車メーカーは電動化しても楽しめる車を作ってくれるはずです。
今後の電動車の発表に注目していきたいですね。
よくある質問
クリーンディーゼル車はガソリン車と同様の扱いなのか?
もちろんディーゼル車もガソリン車と同じく規制対象となります。そのため、同時期に販売も禁止となってしまいます。
各国での差はありますが、2035年~40年頃にはガソリン車およびディーゼル車の販売は禁止となる見込みです。
日本ではいつまでガソリン車に乗れるのか?
日本では、世界各国に足並みを合わせるかたちとなります。明確に時期は断定されていませんが、2030年代にはガソリン車新車販売をゼロとすることを目標としています。
東京都は、現段階において2030年には新車販売をゼロにするという方針が立てられていることから、各地域によって差がでることが予想されます。
ガソリン車の新車販売は禁止されますが、中古車の購入はできそうです。しかし、税金負担が大きくなる可能性や、ガソリンスタンドの減少なども予想されるので今よりも所持しにくい状況に変わっている可能性もあります。
ハイブリッドも廃止されるのか?
アメリカやEUにおいてはハイブリッドも廃止される予定ですが、日本では、ハイブリッドも電動化の枠組みに組み込まれているため、販売は継続される予定です。
>プラグインハイブリッド車もEUでは販売廃止ですが、アメリカでは認められるなど、各国どこまで許容されるのかについては、今後注目していきましょう。
しかし、ハイブリッドもやはりガソリンを使用して走行することから、いずれは廃止に向かう可能性も十分考えられます。