公道を走行する車に必ず貼り付けられているのが「車検シール」です。もし、なんららかの理由で車検シールが剥がれてしまったら、放置してはいけません。
かならず貼り直さなければなりませんが、貼り付け位置は法律で厳密に定められており、貼るのも意外にむずかしく、失敗してしまうこともあります。そんな時、新しく貼り直す車検シールは、どこで再発行できるのでしょうか。
本記事では、車検シールの貼り方や注意点について紹介します。そして、2023年1月に施行が予定されている貼り付け位置の見直しについても詳しく解説します。
目次
車検シールの役割
車検シールは、車検を受けて合格していることを証明するものです。車検ステッカーとも呼ばれますが、正式名称は「検査標章」といいます。
車を公道で走らせるためには、必ず車検を受けて合格しなければなりません。新車購入の場合は初回のみ3年後、以降は2年毎に車検を受ける必要があります。
車検はディーラーをはじめ、整備工場やガソリンスタンド、車検専門店などで受けられ、車検に合格すると車検証(自動車検査証)と一緒に車検シールが交付されます。
車検シールに記載されている情報は、車外から見える表面が自動車検査証の有効期間満了年月、車内から見える裏面が自動車検査証の有効期間満了年月日です。
車検切れの車を公道で走行させると違反点数6点で30日の免停処分になり、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられますので、車検シールで車検の有効期間を確認するようにしましょう。
点検整備済ステッカーとは
点検整備済ステッカーもフロントガラス上部に貼り付けられているため、車検シールと勘違いされることもありますが、車検シールとの違いは以下の3つです。
- フロントガラスの角に貼り付けられている
- 形が丸い
- 次回法定点検を受ける年月の表示
点検整備済ステッカーとは、法定点検を行った際に発行されるものです。法定点検は1年ごとに実施する必要があり、点検整備済ステッカーは次回法定点検を受ける年月を示しているので、車検のタイミングと間違えないようにしましょう。
車検シールを貼る位置
現行
現行の道路運送車両法施行規則第37条の3では「検査標章は、自動車の前面ガラスの内側に前方から見易いように貼り付けることによつて表示するものとする。」と規定され、自動車検査業務等実施要領において、具体的な貼り付け位置が定められています。
その具体的な貼り付け位置は以下になります。
- バックミラーがある場合、その前方のフロントガラス上部
- バックミラーがない場合、運転者席から最も遠いフロントガラス上部
- フロントガラスの上部が着色されている場合、着色部分から下方にずらした位置
このように、現行の車検ステッカーの貼り付け位置は、車の前方から容易に確認できるように決められています。
また、フロントガラスのない車両については「運転者室又は前面ガラスのない自動車にあつては、自動車の後面に取りつけられた自動車登録番号標又は車両番号標の左上部に見易いように貼り付けることによつて表示するものとする。」と規定されています。
フロントガラスのない車両は、バイクやトレーラーです。これらの車両は、ナンバープレートの左上に車検シールを貼ることになります。
2023年1月以降
フロントガラスのある車において、車検シールの貼り付け位置が見直され、改正案が2023年1月に施行される予定です。
改正される理由は、現行の貼り付け位置ではドライバー自身が車検の有効期間を容易に確認できず、車検切れで運行していた車が少なくなかったからです。この問題を解決するために、前方からもドライバーからも容易に確認できる位置に変更することとなりました。
改正案の内容は「前面ガラスに貼り付けて表示する検査標章の表示箇所は、前方かつ運転者席から見易い位置として、前面ガラスの運転者席側上部で、車両中心から可能な限り遠い位置。」とのことです。
つまり、改正後の車検シールを貼る位置は運転席から見た場合、右ハンドル車はフロントガラス上部右角、左ハンドル車はフロントガラス上部左角になります。2023年1月以降は、車検シールを貼る位置に注意しましょう。
車検シールを貼るのは義務
車検に合格していても、車に車検シールを貼らずに公道を走行すれば、道路運送車両法第109条9「自動車検査証若しくは限定自動車検査証を備え付けず、又は検査標章を表示しないで自動車を運行の用に供した者」により罰せられ、50万円以下の罰金が科されます。
保安基準適合標章
指定工場で車の点検整備・検査を行った場合、新しい車検証・車検シールが発行されるまでの仮の車検証になります。車検証・車検シールがないと、公道を走行できないため、その代わりとして「保安基準適合標章」が発行されます。
保安基準適合標章は車検に合格したことを証明するもので、シールではなく紙でできたものです。ミシン目で折り曲げて、表面(有効期限が記載されている側)を車の前方から見えるようにし、フロントガラスの車検シールと同じ定められた位置にテープなどで貼り付けます。
しかし、車検シールが届くまでの仮の証明書で有効期間は15日間なので、車検証・車検シールが届いたら速やかに貼り替えるようにしましょう。
車検シールは普通車と軽自動車で違う
普通車と軽自動車の車検シールは、共通しているところもありますが、違うところもあります。
普通車
- 色:青色
- 発行場所:陸運局
- サイズ:40mm×40mm
普通車の車検シールは、青地に黒文字で、発行場所は陸運局です。
軽自動車
- 色:黄色
- 発行場所:軽自動車検査協会
- サイズ:40mm×40mm
軽自動車の車検シールは、黄地に黒文字で、発行場所は軽自動車検査協会です。サイズは40mm×40mmで、普通車の車検シールと共通です。
車検シールが貼り直しになるケース
車検シールは車検合格後に業者が貼ってくれるため、自分で一から貼り付けるケースはほとんどなく、失敗による貼り直しは基本的には起きません。
車検シールが貼り直しになるケースとして考えられるのは、ドライブレコーダーなどフロントガラス上部に何かを取り付けるために、車検シールの位置を変えようと剥がしたことで、破損や汚損した場合です。
車検シールは貼り直しができないようになっているため、剥がしてしまった場合や破損・汚損した場合は、車検シールを再発行して貼り直す必要があります。
車検シールを再発行する方法
では、車検シールを再発行するには、どうすればよいのでしょうか。
ここでは、車検シールを再発行する方法について詳しく解説します。なお、車検シールを再発行すると、車検証も同時に新しく発行されます。
再発行場所
車検シールが再発行できる場所は、普通車と軽自動車で違います。
普通車の場合
普通車の車検シールが再発行できる場所は、陸運局などです。陸運局は地域ごとに管轄がありますが、車検シールの再発行申請は管轄外の陸運局などでも行えるので、たとえば、東京都在住の人が神奈川県の陸運局で車検シールの再発行を受けることもできます。また、再発行時に対象の車を持ち込む必要もありません。
陸運局の受付日は平日のみで、受付時間は午前が8:45~11:45、午後は13:00~16:00です。管轄により違いがあるので、陸運局に出向く際には事前に確認しておきましょう。
軽自動車の場合
軽自動車の車検シールが再発行できる場所は、軽自動車検査協会です。軽自動車検査協会も地域ごとに管轄がありますが、車検シールの再発行は、こちらも管轄に関係なくどの地域でも手続き、車の持ち込みも不要です。
また、軽自動車検査協会の受付日と受付時間も陸運局と同様ですが、こちらも管轄によって違いがあるので、事前の確認をおすすめします。
必要書類
車検シールを再発行するための必要書類は以下になります。
- 車検証(自動車検査証)
- 使用者の印鑑(認印可)
- 車検シール(検査標章)もしくは理由書(紛失届)
- 検査標章再交付申請書(OCR第3号様式)
- 手数料納付書(申請手数料の印紙を貼る台紙)
- 委任状(本人以外が申請に行く場合)
車検シールは、現物がある場合には持参して提出、紛失した場合は、理由書(紛失届)に必要事項を記入し提出して対応します。
軽自動車の場合は、検査標章再交付申請書がOCR軽第3号様式になります。こちらの書類は、普通車なら国土交通省、軽自動車なら軽自動車検査協会のウェブサイトからダウンロードできます。
手数料の印紙代は普通車も軽自動車も300円です。陸運局は委任状になりますが、軽自動車検査協会の場合は「申請依頼書」という書類になります。
手続き方法
必要書類を持って、普通車なら陸運局、軽自動車なら軽自動車検査協会の窓口へ行き、手続きを行います。検査標章再交付申請書が事前にダウンロードできなかった場合は、窓口で入手可能です。手数料納付書に貼り付ける300円の印紙も窓口で購入できます。
記入例を参考にして、検査標章再交付申請書に必要事項を記入し、完成したら窓口に書類を提出します。問題なければ、車検シールと車検証が再発行されますので、受け取った車検シールを車のフロントガラスに貼り付ければ完了です。
なお、一緒に再発行された車検証には「検査標章再交付」と記載されます。この車検証は、常に携帯しなければなりませんので、車のグローブボックスなどに大切に保管しましょう。
書類作成の注意点
検査標章再交付申請書に必要事項を記入する時は、書き間違えを防ぐために、かならず記入例を参考にして、持参した車検証の内容を確認しながら行いましょう。
車検シールを紛失した場合は、理由書(紛失届)の作成が必要になります。理由書(紛失届)の記入項目は以下の3つです。
- 自動車登録番号または車両番号
- 車体番号
- 紛失した理由
1と2は車検証に記載されているとおりに記入します。3は単純に紛失した場合は「管理不足のため紛失」と記入すれば問題ありません。もし、盗難による紛失の場合は、盗難された年月日や届け出た警察署、そして盗難状況などを詳しく記入します。
また、本人以外が申請に行く場合は、本人が捺印した委任状(軽自動車の場合は申請依頼書)が必要になります。
車検シールの貼り方
手間と時間をかけて再発行した車検シールなので、貼り付けに失敗するわけにはいきません。ここでは、車検シールを確実に貼り付ける方法を説明します。
貼る場所を確認する
フロントガラスがある車の場合、車検シールはフロントガラスの上部に貼ります。具体的な場所は、ガラスの前面にあるルームミラー上部の隙間です。
もし、ルームミラー上部に車検シールを貼る余裕がなければ、ルームミラーのすぐ下で構いません。また、貼るスペースが着色されている場合は、外側からシールの内容が確認できる位置にずらして貼り付けましょう。
2023年1月からは、車検シールの貼り付け位置が運転席から見て、右ハンドル車はフロントガラス上部右角、左ハンドル車はフロントガラス上部左角になりますので注意してください。
フロントガラスがないトレーラーや二輪車の場合は、ナンバープレートの左上に貼ります。
貼り付ける場所をキレイにする
ホコリや汚れ、指紋がついた状態は、車検シールの粘着力がすぐに弱くなり剝がれやすくなります。そのため、車検シールを貼り付ける場所は、事前にキレイにしておきましょう。
フロントガラスの内側に貼り付ける場合は、乾拭き程度で問題ありません。ナンバープレートに貼り付ける場合は、泥や鉄粉などが付着していることもあるので、汚れ具合を見て洗剤を使用したり水拭きしたりして、汚れをしっかり落としてから貼り付けるようにしましょう。
車検シールを貼り付ける
車検シールの貼り方は、シールの台紙に貼り方の説明が記載されているので、その手順に従って貼り付けます。具体的な手順は以下になります。(車検シールによって配置や表現される記号などに違いがあります)
- ミシン目①を山折りにし、ミシン目②を谷折りにする
- シールの右側半分を台紙からはずし、透明シール右側に貼り付ける
- 残りの半分も台紙から剥がして透明シールに貼る
- 透明シールと一体化した車検シールごと台紙から剥がす
- フロントウインドウもしくはナンバープレートの所定の位置に貼り付ける
ミシン目部分は「山折り」や「谷折り」とも記載されていますので、折り方を間違えることはないでしょう。
まとめ
車検シールは、貼り付けていないと道路運送車両法第109条9により罰せられ、50万円以下の罰金が科されます。剥がれてしまった場合には速やかに再発行を行い、かならず所定の位置に貼り付けるようにしてください。
2023年1月より、車検シールの貼り付ける位置が改正され、運転席から見た場合、右ハンドル車はフロントガラス上部右角、左ハンドル車はフロントガラス上部左角になります。
2023年1月以降に貼り直す場合は、これまでと車検シールの貼り付ける位置が変わりますので、気をつけましょう。