日産の本格的な軽自動車市場への参入は、2002年のモコが始まりです。その後も、オッティやピノなども投入しましたが、すべてOEMでした。しかし近年、日産が企画・設計した軽自動車が次々と市場に投入されています。そこで今回は、日産の軽自動車一覧と各車種の価格や特徴についてまとめました。
目次
日産の軽自動車とは?
1933年12月に「自動車製造」という社名で創業され、約90年の歴史を持つ日産自動車は、長らく軽自動車を手掛けていませんでした。日本の四輪市場で大きなウェイトを持つ軽自動車市場に参入したのは2002年で、スズキからOEM供給された「日産 モコ」が最初です。
その後も、三菱からのOEM供給による「日産 オッティ」や「日産 キックス」、スズキからのOEM供給による「日産 ピノ」など、軽自動車ラインアップの充実が図られましたが、2013年にこの流れが大きく変化しました。
この年、三菱との合弁会社「NMKV」が設立され、三菱の主導ではあるものの日産が企画段階から関わった軽自動車「日産 デイズ」が誕生しました。そして現行モデルでもある2代目デイズは、日産が設計し、製造は三菱に委託する方法で、三菱主導から日産主導に変化しています。
2023年3月現在、商用車を除くと「日産 サクラ」「日産 ルークス」「日産 デイズ」「日産 NV100クリッパー リオ」の4車種が軽自動車としてラインアップされ、多くが日産の企画・設計となっています。
日産軽自動車のメリットデメリットは?
日産自動車が手掛ける軽自動車にはどのようなメリット・デメリットがあるでしょうか。ここでは、メリットとデメリットをそれぞれまとめています。
メリット
日産の軽自動車を選ぶメリットのひとつは、充実した独自の装備です。例えばサクラ、ルークス、デイズには日産独自の安全技術「プロパイロット」が搭載されており、アクセル、ブレーキ、ハンドル操作をアシストしてくれる「全車速追従型クルーズコントロール」に「レーンキープアシストシステム」が組み合わされ、安全でストレスの少ないドライブを実現してくれます。
次に、設計に日産が関わっていることで、性能への信頼感が増しています。2代目となる現行デイズは、岡山県倉敷市にある三菱自動車工業水島製作所で生産されていますが、プラットフォームとパワートレインは日産による設計で、オリジナルに開発されました。
さらに、日産のサービスを期待できることもメリットとして挙げられます。日産は国内トップクラスの自動車メーカーとして長い実績があり、質の高いサービスを提供してきました。そうした日産ブランドのサービスを受けられるのも、日産の軽自動車を選ぶメリットです。
デメリット
日産の軽自動車は、委託製造もしくはOEM供給なので、日産による完全オリジナルではないというデメリットがあります。サクラ、ルークス、デイズは三菱自動車工業水島製作所で、NV100クリッパー リオ、NV100クリッパー、NT100クリッパーはスズキの磐田工場で生産されており、日産は軽自動車の生産ラインを持っていません。この点は、もし日産の製造にこだわるのであれば、デメリットに感じるでしょう。
つまり、デザインや装備内容の違いはあれど、ほぼ同一のスペックを持った車が三菱自動車やスズキにも存在するということになります。要するに、どうしても日産の軽自動車を選ばなければ実現できない走行や快適性があるわけではないので、選択肢としての魅力が若干薄くなってしまう可能性は否めません。
日産 軽自動車一覧と各車種の特徴とスペック
ここからは商用車も含め、日産からラインアップされている、サクラ、ルークス、デイズ、NV100クリッパー リオ、NV100クリッパー、NT100クリッパーの全6車種の特徴と、そのスペックを説明します。
日産 サクラ
日産 サクラは、日産が軽自動車として初めて提供する電気自動車で、「日本カー・オブ・ザ・イヤー2022-2023」を受賞しました。ベースとなる車両は日産 デイズですが、ガソリンエンジンの代わりに定格出力20kWのモーターを、ガソリンタンクの代わりにリチウムイオン電池を装備し、最高出力はターボエンジン搭載車と比べてもそん色のない47kW(64ps)を誇ります。
とにかく乗りやすさにこだわっており、どの速度域からアクセルを踏んでも力強くてスムーズ、しかも電気自動車らしい静かな加速を実現。高速道路の合流や追い越し、さらには急な坂道でもパワー不足を感じることがありません。
ドライブモードには「スポーツ」、「ノーマル」、「ECO」の3モードを用意し、アクセルに機敏に反応するスポーツモードから、エネルギー効率のよい「ECO」まであらゆる場面に適合します。
フロントフェイスは、Vモーショングリルからシームレスな仕様で、やり過ぎない程度に電気自動車らしい先進性を表現。無駄なものを削ぎ落としてスッキリさせつつ、シャープで凛とした上質な印象です。
内装はファブリック素材を多く使用し、上質なテイスト。収納スペースには車名をイメージさせる花びらの模様があしらわれ、気の利いた演出が施されています。プレミアムインテリアパッケージを選べば、本革巻きステアリングや前席ドアアームレストなど、ワンランク上の内装も味わえます。
カラーは全15色もラインアップがあり、豊富な選択肢から自分らしさを存分に発揮できます。ただし、グレードによって選べるカラーが異なりますので、希望のカラーがある場合はグレードと共に、購入前にチェックしましょう。
【日産 サクラ X】スペック表
ボディサイズ(全長×全幅×全高) | 3,395mm×1,475mm×1,655mm |
ホイールベース | 2,495mm |
最大乗車定員 | 4名 |
車両重量 | 1,290kg |
燃費 | WLTCモード:124Wh/km |
エンジン種類 | – |
エンジン最高出力 | – |
エンジン最大トルク | – |
モーター種類 | 交流同期電動機 |
モーター最高出力 | 47kW/2,302-10,455rpm |
モーター最大トルク | 195N・m/0-2,302rpm |
駆動方式 | 前輪駆動 |
トランスミッション | – |
新車価格 | 2,317,000円(消費税抜) |
日産 ルークス
日産 ルークスは、日産自動車が提供する軽スーパーハイトワゴンで、軽自動車の中でもっとも人気があり、もっとも熾烈な競争が行われているカテゴリーに位置します。ライバルは、ホンダ N-BOX、スズキ スペーシア、ダイハツ タントなどです。
「ルークス(ROOX)」は、英語で空間を意味する「ルーム(Room)」と、最大を意味する「マックス(Max)」をかけ合わせた造語で、その車名のとおり軽自動車とは思えないほどの広い車内空間を実現。室内高が1.4mあるため、子どもなら立って移動できるほどの高さがあり、開放感もたっぷりです。
ルークスのエクステリアは、上品でスッキリとした印象。少しツリ目のヘッドランプが良いアクセントとなり、甘くなり過ぎない、精悍な印象をプラスしています。このほかハイウェイスターグレードも用意されており、こちらは日産のデザインアイコンとなっているVモーショングリルを採用。派手さを抑えつつ、よりシャープな印象となっています。
【日産 ルークス S 2WD】スペック表
ボディサイズ(全長×全幅×全高) | 3,395mm×1,475mm×1,780mm |
ホイールベース | 2,495mm |
最大乗車定員 | 4名 |
車両重量 | 1,170kg |
燃費 | WLTCモード:20.9km/L |
エンジン種類 | DOHC水冷直列3気筒 ガソリン 659cc |
エンジン最高出力 | 38kW(52ps)/6,400rpm |
エンジン最大トルク | 60N・m(6.1kgf・m)/3,600rpm |
モーター種類 | 交流同期電動機 |
モーター最高出力 | 2.0kW/2,000rpm |
モーター最大トルク | 40N・m/100rpm |
駆動方式 | 前輪駆動 |
トランスミッション | エクストロニックCVT(無段変速機) |
新車価格 | 1,330,000円(消費税抜) |
日産 デイズ
日産 デイズは、日産自動車と三菱自動車の合弁会社「NMKV」の車両プロジェクトマネジメントによって企画・開発された軽トールワゴンで、街乗りはもちろん、週末には郊外までドライブといったときにも活躍できる、軽量ボディと低燃費にこだわった軽自動車です。ライバルには、スズキ ワゴンR、ダイハツ ムーヴ、ホンダ N-WGNなどが並びます。
デイズはとくに内装にこだわりを持っており、軽自動車でありながら程よい高級感を醸し出しています。メーカーオプションの「ハイウェイスター(外装色:ソーダブルー/アッシュブラウン、内装色:プレミアムコンビネーションインテリア)」は、一般社団法人 日本流行色協会JAFCAが主催するオートカラーアウォード2019で特別賞を受賞しました。
無重力空間からヒントを得て、ロングドライブでも疲れにくいゼログラビティシートを採用しており、長時間のドライブを快適にサポートしてくれます。軽自動車では困りがちな小物収納も充実していて、ティッシュボックス(スリムタイプ)がちょうど入るインストスライドボックスは、シンプルながら心地よい空間づくりに貢献してくれます。
安全性能も秀逸で、プロパイロットをはじめ、インテリジェント アラウンドビューモニター、インテリジェント オートライトシステム、先行車発進お知らせ、標識検知機能など、ドライブ中のストレスを軽減してくれる機能が満載です。
【日産 デイズ S 2WD】スペック表
ボディサイズ(全長×全幅×全高) | 3,395mm×1,475mm×1,650mm |
ホイールベース | 2,495mm |
最大乗車定員 | 4名 |
車両重量 | 840kg |
燃費 | WLTCモード:23.2km/L |
エンジン種類 | DOHC水冷直列3気筒 ガソリン 659cc |
エンジン最高出力 | 38kW(52ps)/6,400rpm |
エンジン最大トルク | 60N・m(6.1kgf・m)/3,600rpm |
モーター種類 | – |
モーター最高出力 | – |
モーター最大トルク | – |
駆動方式 | 前輪駆動 |
トランスミッション | エクストロニックCVT(無段変速機) |
新車価格 | 1,211,000円(消費税抜) |
日産 NV100クリッパー リオ
NV100クリッパー リオは、後述する商用モデル「NV100クリッパー」の乗用モデルとして販売されている軽ワンボックスカーです。2007年の発売当初は三菱からOEM供給を受けていましたが、3代目となる現行モデルはスズキからOEM供給を受けています。
NV100クリッパー リオの魅力は、なんといっても広々としたクラストップレベルの室内空間です。室内長2,240mm×室内幅1,355mm×室内高1,420mmというゆとりのサイズに加えて、前後乗員間距離が1,080mmあるので、後部座席でも大人が十分にくつろげます。
ほかにもオーバーヘッドシェルフ、グローブボックス、インストアンダーボックス、インストトレイ、助手席シートバックポケット、カードケースなど収納力も抜群。さらに全グレードでUSB電源ソケットを2個装備し、運転席シートヒーターも標準装備しているので高い利便性を実感できます。
【日産 NV100クリッパー リオ E 2WD】スペック表
ボディサイズ(全長×全幅×全高) | 3,395mm×1,475mm×1,910mm |
ホイールベース | 2,430mm |
最大乗車定員 | 4名 |
車両重量 | 960kg |
燃費 | WLTCモード:13.3km/L |
エンジン種類 | DOHC12バルブVVT水冷直列3気筒インタークーラーターボ ガソリン 658cc |
エンジン最高出力 | 47kW(64ps)/6,000rpm |
エンジン最大トルク | 95N・m(9.7kgf・m)/3,000rpm |
モーター種類 | – |
モーター最高出力 | – |
モーター最大トルク | – |
駆動方式 | 後輪駆動 |
トランスミッション | 4速オートマチック |
新車価格 | 1,618,000円(消費税抜) |
日産 NV100クリッパー(商用車)
NV100クリッパーは、前述の「NV100クリッパー リオ」の商用モデルにあたる軽ワンボックスカーで、優れた取り回しと積載性能の高さが魅力です。シンプルでスッキリとしたエクステリアデザインは、いかにも働く車といった印象。荷物を積む、運転する、運ぶといった必要な機能をわかりやすく提供しています。
2015年より発売されている現行モデルは、5速MTをベースにクラッチとシフトの操作を自動化したAGS(オートギアシフト)を採用しており、AT車やCVT車と比較し、重い荷物を積んで坂道を上る力強さや、それに伴う燃費の良さが特長です。NV100クリッパーにはターボグレードがありませんが、AGSは力強い走りを補ってくれます。
なお、ベースグレードである「DX」には、インテリジェントエマージェンシーブレーキなどの安全装備がありません。安全装備は「DXセーフティパッケージ」から上のグレードになり、さらに「DX GLパッケージ」と「GX」にはアイドリングストップ機能も搭載されます。もちろん、安全装備がなければそのぶん車両本体価格は安くなりますが、安全を重視したいならグレードをアップする必要があります。
【日産 NV100クリッパー(商用車) DX 2WD/5MT】スペック表
ボディサイズ(全長×全幅×全高) | 3,395mm×1,475mm×1,895mm |
ホイールベース | 2,430mm |
最大乗車定員 | 4名 |
車両重量 | 870kg |
燃費 | WLTCモード:17.2km/L |
エンジン種類 | DOHC12バルブ吸排気VVT水冷直列3気筒 ガソリン 658cc |
エンジン最高出力 | 36kW(49ps)/6,200rpm |
エンジン最大トルク | 60N・m(6.1kgf・m)/4,000rpm |
モーター種類 | – |
モーター最高出力 | – |
モーター最大トルク | – |
駆動方式 | 後輪駆動 |
トランスミッション | 5速マニュアル(5MT) |
新車価格 | 991,000円(消費税抜) |
日産 NT100クリッパー(商用車)
NT100クリッパーは、スズキ キャリィトラックのOEMモデルで、日産自動車が販売する軽トラックです。荷台床面地上高は650mmと比較的低く、重い荷物の積み下ろしも楽に行えます。
荷台サイズは長さ1,940mm、幅1,410mmと広く、みかんコンテナ(520mm×365mm×310mm)なら54ケース、リンゴコンテナ(640mm×320mm×290mm)なら48ケース、ビールケース(450mm×365mm×315mm)なら60ケースの積載が可能。ただし、最大積載量は350kgなので注意が必要です。
2022年一部改良では吸気側にもVVTが採用され、最高出力は37kW(50ps)/6,200rpm、最大トルクは59N・m(6.0kgf・m)/3,500rpmになりました。運転席&助手席エアバッグとEBD付きABSは全グレードに標準装備されています。
【日産 NT100クリッパー(商用車) DX 2WD/5MT】スペック表
ボディサイズ(全長×全幅×全高) | 3,395mm×1,475mm×1765mm |
ホイールベース | 1,905mm |
最大乗車定員 | 2名 |
車両重量 | 730kg |
燃費 | WLTCモード:18.2km/L |
エンジン種類 | DOHC12バルブ吸排気VVT水冷直列3気筒 ガソリン 658cc |
エンジン最高出力 | 37kW(50ps)/6,200rpm |
エンジン最大トルク | 59N・m(6.0kgf・m)/3,500rpm |
モーター種類 | – |
モーター最高出力 | – |
モーター最大トルク | – |
駆動方式 | 後輪駆動 |
トランスミッション | 5速マニュアル(5MT) |
新車価格 | 844,000円(消費税抜) |
まとめ
今回は日産自動車が手掛けている軽自動車の一覧と、価格や特徴をまとめました。
軽自動車を販売している歴史は浅いとはいえ、「さすがは日産」と呼べるラインアップです。今回の記事を参考に、日産の軽自動車購入を検討してみるのはいかがでしょうか。
よくある質問
日産の軽自動車はどこで作っているの?
全6車種の軽自動車は2つの工場で作られています。
サクラ、ルークス、デイズは三菱自動車工業水島製作所で、NV100クリッパー リオ、NV100クリッパー、NV100クリッパーはスズキの磐田工場で生産されています。
日産の軽自動車はいつから販売されているの?
日産が軽自動車の販売を始めたのは2002年4月からで、スズキからOEM供給された「日産 モコ」が最初でした。姉妹車となるスズキ MRワゴンのフルモデルチェンジに合わせて、モコも3代にわたりモデルチェンジをしましたが、2016年に販売が終了しています。
なお日産自動車は、モコに先立つこと2年半ほど前に「ハイパーミニ」という軽自動車規格の自動車を販売していたことがあります。シティコミューターとして開発されたEV車で、少数の試験販売でした。