ある日、車に乗ろうとしたら、バッテリー上がりが原因でエンジンがかからない。出勤時や出先でこのようなトラブルが起こってしまうと困りますね。この記事では、バッテリー上がりの原因や起きてしまった時の対応を紹介します。
バッテリー上がりを起こさないためのメンテナンスも大切ですが、バッテリーは正しい知識を持って取り扱わなければ、命に関わる事故にもつながりかねません。
本記事を通して、バッテリー上がりの正しい知識を身につけましょう。
目次
バッテリー上がりとは
車のエンジンは、バッテリーに蓄電された電気を使って始動します。バッテリー上がりは、蓄電されている電気が不足してしまった状態を指します。
よくある例として、ルームランプの消し忘れや長い期間車に乗っていなかった場合にバッテリー上がりが起きやすくなっています。
バッテリー上がりのトラブルはロードサービス出動理由で1位となっています。
2022年4月〜2023年3月の集計データによると、バッテリー上がりによる出動件数はおよそ89万件、全体の40%を占めています。
出典:JAF(日本自動車連盟)
データからも、バッテリー上がりによるトラブルの多さが見て取れます。自分には関係ないと思わずに、普段から気をつけるべきトラブルといえるでしょう。
バッテリー上がりの原因
車のバッテリー上がりの原因は、電気の消費が多い、長期間車を使用していない、走行距離が極端に短い、などが挙げられます。
電気の消費が多い
昨今の自動車には電気を必要とする装備が多く、ルームランプやヘッドランプといったランプ類やカーナビ、ドライブレコーダー、エアコン、スマホ等の充電など、多くの電気を使います。
中でも、ルームランプの消し忘れによるバッテリー上がりはよく聞くトラブルです。また、ここ数年で普及してきたドライブレコーダーも、停車中でも監視できる駐車監視機能は、常時電源によって稼働させているモデルが多く、注意が必要です。特に、長期間使用したバッテリーの場合、こうした影響を強く受けるので、定期的なバッテリー交換も大切なメンテナンスのひとつです。
長期間車を使用していない
車は使用していない状態でも少しずつ電気を消費しています。また、バッテリー自身も自然放電をすることから、久しぶりに車に乗ろうとした際、エンジンがかからなくなっていることも。
しばらく車に乗らないという場合は、バッテリーの端子を外しておくという方法もバッテリー上がりを防ぐ有効な手段です。
走行距離が極端に短い
普段から車を使っているのに?と思うかもしれませんが、チョイ乗り程度では、バッテリー上がりを起こしてしまうこともあります。
バッテリーは、走行中やアイドリング中にはオルタネーターと呼ばれる発電機から充電されます。エンジンをかけてもすぐに停止するような状況の場合、充電よりも消費される量が上回ってしまいます。
バッテリー上がりを防ぐためにも、週に一度程度はいつもより長時間の走行を意識しましょう。
バッテリー上がりが疑わしい現象
バッテリー上がりが起こった際の症状を紹介します。症状の多くは、電気系統の不具合が出るのが特徴です。紹介例のような症状が出た場合は、バッテリー上がりを疑いましょう。
エンジンがかからない
バッテリー上がりに気づく主な症状として、エンジンがかからないことが挙げられます。
エンジンをかけるためには、セル(スターター)モーターを起動する必要があります。この起動には、多くの電力を消費することから、バッテリーの電力が不足していると起動ができず、エンジンがかかりません。
ライト、ランプが点かない
鍵を開錠するとルームランプが点灯しますが、バッテリーが上がっていると点灯しません。
また、ヘッドランプも点灯しないので、これらの症状が確認できたらバッテリー上がりを疑いましょう。
電装品が使えない
ナビなどをはじめとした電装品が使用できない場合も、バッテリー上がりが原因の可能性が高いと考えましょう。
電気を使用するものは、バッテリーから電気が供給されることによって使うことができます。そのためバッテリーが上がってしまうと、これらの機能を使用できなくなります。
バッテリー上がりに似た現象
バッテリー上がりと疑わしい症状が出た際でも、中にはバッテリー上がりでない場合もあります。これらは、簡単に対処できるものから大きな故障まで考えられます。いざというときに適切に対処できるよう確認していきましょう。
セル(スターター)モーターの故障
セルモーターは、エンジンを作動させるためのモーターです。エンジンがかかる際にカチカチと音がするのがセルモーターで、このモーターが故障するとエンジンをかけることができません。
セルモーターの故障は音によって確認できます。エンジンをかける際に「キュルキュル音」がする場合や、キーを回した際の「カチ」といった音がしない場合は、セルモーターを疑うといいでしょう。
気になる症状がでた場合は、早めに点検・整備をすることで、未然に故障を防ぐことができます。
バッテリーの寿命
バッテリー本体の寿命が尽きると電装品の使用はもちろん、エンジンをかけることもできません。バッテリーの交換目安は、一般的に2~3年といわれています。もちろん、その年数で必ずしもバッテリーの寿命が尽きるわけではなく、中には交換したことがないという方もいるかもしれません。
使用年数だけではなく、バッテリーの電圧を点検しておくことも大切です。通常のバッテリー電圧は12.5V〜12.8V、エンジンが始動した状態では13.5V〜14.5Vが正常といわれています。この数値を下回ったら、バッテリーの劣化・取り替え目安と考えるといいでしょう。
バッテリーが劣化してくると、バッテリー上がりを起こしやすくなります。定期的な点検を行い、バッテリートラブルを未然に防ぎましょう。
ガソリンが無い(ガス欠)
当然ですが、ガソリン残量が無い場合もエンジンはかかりません。この場合、エンジンをかけようとした際、セルモーターは回るのですがエンジンはかかりません。また、バッテリーが上がっていないのでルームランプをはじめとした電装品は通常通り使えます。
電装品に問題はなく、セルモーターも回るのにエンジンがかからない場合は、ガス欠を考えましょう。
スマートキーの電池切れ
スマートキーの電池が切れている場合、普段通りポケットやカバンに入れた状態ではエンジンがかからなくなります。ただし、ドアロックの解除もできないので、多くはエンジンを始動する前に電池切れに気づくでしょう。
スマートキーの電池を意識して交換している方は少ないと思いますが、1~2年に一度程度、例えば“車検時に交換する”などと決めておけば安心です。
万が一、スマートキーの電池が切れた場合、以下の方法で開錠、エンジン始動が可能です。
ドアロック開錠
メカニカルキーをスマートキーから取り出し、鍵穴に差し込み開錠します。。
注意点として、純正のオートアラーム(セキュリティ)はスマートキー以外の方法で開錠すると発報します。警報を停止する方法は、各メーカーまたは車両によって異なることから事前に確認しておくようにしましょう。警報は、ACCやエンジンを始動することで停止可能となるケースが多いです。慌てずに手順通り実施しましょう。
エンジン始動
エンジンを始動する場合、シフトポジションが「P」となっているのを確認したのち、ブレーキペダルを踏みスマートキーのエンブレム部分をプッシュスタートボタンに当てます。その後、メーカーによって違いますが「ピー」などと音が鳴るのでプッシュスタートボタンを押し、エンジンを始動しましょう。
ステアリングロックされている
車には盗難防止を目的とした、ステアリングロックと呼ばれる機能が備わっています。ステアリングロックが効いている状態では、エンジンがかかりません。この場合は、ハンドルを左右どちらかに回しながら、キーまたはプッシュスタートボタンを押すことでエンジンをかけられます。
シフトポジションが「P」になっていない
シフトポジションが「P」でない場合、エンジンは始動しません。ルームランプやメーターディスプレイといった電装品は正常に点灯するにも関わらずエンジンが始動しない場合、シフトポジションをチェックしましょう。
駐車時は「P」にするのが当たり前なので、逆に見落としてしまいがちです。エンジンが始動しないときには、まずポジションの確認をしましょう。
やってはいけないバッテリー上がりの対応
いざバッテリーが上がると、やはり焦ってしまうものです。
しかし、対処方法を誤ってしまうと、バッテリー上がりだけでなく、さらなるトラブルを生んでしまうこともあります。
やってはいけない対応を確認しておきましょう。
何度もエンジンを始動しない
エンジンが一度でかからない場合、何度も同じことをしてしまいがちですが、やりすぎは禁物です。エンジン始動時は多くの電力を消費します。電圧が低下しているバッテリーでエンジン始動を繰り返すことで電力を急激に消耗するため、バッテリー交換が必要となってしまうケースがあります。
数回試してもエンジンがかからない場合は潔く諦め、ジャンピングスタートや救援サービスを依頼しましょう。
バッテリー上がりを長時間放置
バッテリー上がりとなった車を長時間放置するのもやめましょう。そのうち直るだろうと考える方もいるかもしれませんが、放置していても自然放電するのみで、バッテリーの復旧ができなくなってしまいます。復旧できない場合は、バッテリーの交換しか方法がなくなってしまうので、早めの対応をしましょう。
知識が無い状態での対処
バッテリー上がりへの対応を知らない、うろ覚えの状態で対応をすることは避けましょう。下手に触れることで感電する危険性があります。バッテリーの+と-ターミナルに触れてもビリッと感じる程度ではありますが、濡れた手で触ると重篤な状態に陥る危険性があります。
また、バッテリーの復旧にジャンピングスタートと呼ばれる方法がありますが、接続の仕方を間違えると故障を招く原因となります。
自信がない方は、無理せず救援要請をするようにしましょう。
バッテリーが上がり時の対応
バッテリーが上がってしまった時の対応を紹介します。
自身で復旧する場合は故障を招かないためにも、しっかり手順を確認しておきましょう。無理せずロードサービス等のプロに救援を依頼するのも正しい選択です。
実際にバッテリーが上がった際にスムーズな対応ができるよう覚えておきましょう。
ジャンピングスタートによる復旧
ジャンピングスタートは、バッテリーが上がった車と救援車をケーブルでつなぎ、電気を分けてもらうことで復旧する方法です。
そのため、バッテリーの電気を分けてくれる車(救援車)とブースターケーブルが必要です。
ジャンピングスタートによる復旧手順は以下です。
1.バッテリー上がりの車と救援車を近づける。(ケーブルがつなげる距離)
2.救援車のエンジンを停止させる。
3.バッテリー上がりの車のバッテリー「+端子」に赤ケーブルをつなぐ。
4.救援車側のバッテリー「+端子」に赤ケーブルをつなぐ。
5.救援車側のバッテリー「-端子」に黒ケーブルをつなぐ。
5.バッテリー上がりの車の金属部分(エンジン等)に黒ケーブルをつなぐ
6.救援車のエンジンを始動させる。
7.救援車のアクセルを踏み回転数が高めになるよう維持する。(1500~3,000回転)
8.5分程度充電したらバッテリー上がりの車のエンジン始動を試みる。
9.エンジン始動が確認できたら、ケーブルを逆手順ではずしていく。
注意点として、必ずパーキングブレーキ、シフトが「P」となっていることを確認しておきましょう。
また、ハイブリッド車や電気自動車は救援車として使用できません。救援車がいない場合は、迷わずにロードサービスをはじめとした救援サービスに依頼しましょう。
ジャンプスターターによる復旧
ジャンプスターターとは、小型のバッテリーでありカー用品店などで購入することが可能です。価格も1万円程度で購入できるものがあるので、緊急時に備え用意しておくと安心です。
ジャンプスターターを用いた復旧は以下の手順です。
1.ジャンプスターターの充電状態を確認する。
2.付属されているブースターケーブルをジャンプスターターへ接続する。
3.車へ接続する。(赤が+、黒は-端子へ接続)
4.30秒~1分程度経過したらエンジンを始動する。
5.エンジン始動確認後、逆手順でブースターケーブルを外す。
基本的な使い方は同じですが、機種によってジャンプスターターに必要な充電残量や使い方が違う場合があります。使用前に取扱説明書をしっかり読んでから実施してください。
ロードサービス等の救援サービスを利用する
ブースターケーブル等復旧に必要な機材がない場合や、救援車が周りにいない環境の場合は、ロードサービス等の救援サービスを利用しましょう。
JAFでは、会員であればバッテリー上がりは無料、非会員であれば13,130円で対応してもらえます。
また、バッテリー上がり以外にもパンクやキー閉じ込み、故障時の牽引(距離制限あり)など、多くの自動車トラブルに駆けつけてくれる心強いサービスです。
入会金2,000円+年会費4,000円で加入可能なので、この機会に入会を検討してみてはいかがでしょうか?
また、JAFだけではなく「カーバッテリー110番」というサービスもおすすめです。最速5分で現場へ到着するスピード感、エリアによってことなりますが出張費0円というのも魅力的です。
バッテリー上がりにかかる費用は8,000円(税込8,800円)~。バッテリーの交換が必要となった場合には、バッテリー交換サービスも行っています。
バッテリートラブル時はこちらもぜひご利用ください。
→相談窓口はコチラ | カーバッテリー110番 (life-110.com)
バッテリー上がり防止策
バッテリー上がりを起こさないために普段から心掛けておきたいことを紹介します。急なトラブルにあわないためにも、ぜひ実施するようにしましょう。
走行、アイドリングをする
毎日のように車に乗る方、あまり乗らない方、長距離走行を頻繁にする方、チョイ乗りが多い方と、車の使い方は様々です。
バッテリーはエンジンが始動しているときに充電がされることから、あまり車を使用しない状態はバッテリーにとってよくありません。また、エンジン始動時間が短い場合も注意が必要です。
バッテリー上がりを防ぐためにも週1回30分程度の走行、またはエンジン始動を心掛けるといいでしょう。
バッテリーを充電する
バッテリーの残量を点検、充電するのもバッテリー上がりを防ぐ有効な手段です。
カー用品店やホームセンター等でバッテリー充電器を購入することができます。または、ディーラーや整備工場にて点検等の際にバッテリー点検をお願いするのもいいでしょう。
バッテリー充電器を用いた充電をする場合、ナビ等をはじめとした電気機器の故障を防ぐためにもバッテリーを車から取り外して行うことが重要です。
この際、過充電防止のため充電量が90%を超えたら停止するようにしましょう。機種によっては自動充電停止機能もあるので、安全保護機能が充実した使いやすい充電器を選びましょう。
定期的にバッテリーを交換する
バッテリーは消耗品であることから、定期的な交換が必要です。2~3年を目安に交換するといいでしょう。
中には、さらに長期間交換していない方もいると思いますが、いつバッテリーが寿命を迎えるか不安を抱えながら車を使用するよりも、車検時にバッテリー交換を実施するなどして、トラブルなく快適なカーライフを送れるように心掛けましょう。
長時間放置する際はバッテリーから端子を外す
車にしばらく乗る予定がない場合、次に乗る際バッテリーが上がっている可能性があります。事前に長期間乗らないと分かっているのであれば、バッテリーの-端子を外しておくことでバッテリー上がりを防ぐことができます。
ただし、端子を外すことで車へ電気が送られないので以下の注意が必要です。
・オーディオや時計等の設定がリセットされる。
・キーレスも使用不可となるためメカニカルキーを用いたドアロックが必要。
外した端子は他の金属部分に触れないようにタオルやビニールテープ等を使って絶縁しておきましょう。
端子を外す作業やナビ等をはじめとした電気機器の設定がリセットされるなどデメリットはありますが、長期間車に乗らないことによるバッテリー上がりを防げることを考えれば、メリットのほうが大きいとも考えられます。
まとめ
バッテリー上がりは意外に身近なトラブルです。トラブルを起こさないためにも予防策を日頃から行うことはもちろんですが、バッテリー上がりを起こした時に正しく対応することも大切です。
別の故障や感電などの事故を防ぐためにも、決して無理をして処置してはいけません。困った時は、迷わずプロに相談をして、安心安全なカーライフを送りましょう。
よくある質問
バッテリーが上がる原因は?
車のバッテリーが上がってしまう原因として、電気の消費が多いこと、長期間車を使用していない、走行距離が極端に短いといったことが挙げられます。
・電気の消費が多い
・長期間車を使用していない
・走行距離が極端に短い
特に車をそれなりに使用している方には、走行距離が短い点は盲点になりがちです。電気の供給量よりも使用量が多くなれば、バッテリーの蓄電量は少なくなり、バッテリー上がりを起こしやすくなります。週に1度、30分程度の走行を心掛けてみてください。
頻繁に乗らない場合どうすればいい?
しばらく乗る予定がないことが事前にわかっている場合、バッテリーの-端子を外しておくことでバッテリー上がりを防ぐことができます。
使用時は、-端子を取り付ければ再度使用することが可能です。
バッテリー復旧後は何もしなくていい?
バッテリーを復旧したあとは、整備士に診断してもらうのがおすすめです。一度上がってしまったバッテリーは劣化し、元のレベルに戻りません。
再度バッテリー上がりを起こす可能性が高いので、点検を実施・交換する必要があるかも含め、整備士に相談してみましょう。