各自動車メーカーより、続々とラインアップされている電気自動車。ガソリン車からの乗り換えを検討している方も多いのではないでしょうか。
その際気になることとして、充電料金はどのくらいかかるのか?ガソリン代と比較してどうか?といった電気自動車にかかるコストについて考えている方もきっと多いはず。
この記事では、電気自動車の充電料金の目安、ガソリン代との比較、電気自動車ならではの充電料金の節約方法などを解説していきます。
目次
電気自動車の充電方法
電気自動車の充電には、「普通充電」と「急速充電」の2つの方法があります。大きな違いは、充電にかかる時間です。
普通充電は、自宅などでの充電に用いられる充電方法で、容易に設置ができてコストが抑えられる分、充電には時間を要します。
急速充電では、大容量の出力によって充電時間を短縮できる分、大掛かりな設備となり設置費用も高額で、多くは高速道路SA/PAやディーラーなどに設置されています。
次に、それぞれの充電方法を解説していきます。
普通充電
普通充電は、一般的に100Vもしくは200VのAC電源を用いて、出力3〜6kWhの充電器によって充電されます。主に自宅や外出先での買い物中などに充電するといった用途で、基礎充電や目的地充電ともいわれています。
普通充電を用いた充電では、満充電までに数時間〜十数時間かかります。
充電時間は、3kW充電器で30kWhのバッテリーが満充電となる時間は約10時間のところ、6kW充電器の場合は約5時間と、出力が高くなるほど充電時間が短くなります。
普通充電のメリットは、設置費用が比較的安価であることから自宅にも設置しやすいこと、充電にかかる費用が急速充電に比べて安いことが挙げられます。
急速充電
急速充電は、DC電源を用いた大容量出力による短時間での充電が可能となる充電方法です。
30kWhのバッテリーを30kW充電器によって充電すると、約1時間で充電が完了します。
その反面、設備が大掛かりとなり設置費用が高額になりやすい、保守メンテナンス費用などのコストがかかるといった点はデメリットとなります。
また、急速充電はバッテリーへの負荷軽減や発熱防止のため、充電時間は30分(バッテリー容量80%)が目安とされています。充電待ちによる混雑を避ける目的もあり、所定時間で充電を停止する充電スタンドもあります。
充電料金の目安
ここでは、電気自動車の充電によってかかる料金をまとめました。
それぞれ、電力会社の料金プラン、充電認証カードによって金額が異なります。それぞれのライフスタイルに合わせたプランを選ぶことが、費用を抑えるポイントとなりそうです。
自宅での充電
自宅での料金は、契約している電力会社のプランによって料金が変わります。
東京電力のスタンダードプランのスタンダードSを例に、料金目安を説明していきます。
<プラン:スタンダードS(2024年2月時点)>
◯基本料金
295.24円(15Aの場合=442.86円)
◯電力量料金(1kWh)
〜120kWh :30.00円
121kWh〜300kWh:36.60円
301kWh〜 :40.69円
〇日産サクラ(バッテリー容量:20kWh)の場合
〜120kWh :600.00円
121kWh〜300kWh:732.00円
301kWh〜 :813.80円
日産の軽電気自動車であるサクラの場合、一回あたりの満充電において基本料金等を差し引いてかかる費用は600円〜813.8円となります。
もちろん、バッテリー容量が大きくなると、その分電力を使用するので料金は高くなります。
充電スポットでの充電
充電スポットの利用では、会員と非会員(ビジター)で料金に違いがあります。
外充電をする機会が多い方や急速充電を月に数回行う方は、会員となり充電認証カードをもっておくことのほうがメリットが大きくなります。
それぞれの料金体系を確認してみましょう。
カード名 | プラン | 月会費 (税抜価格) |
急速 | 普通 | ||
都度利用料金 (税抜価格) |
料金目安 (30分) |
都度利用料金 (税抜価格) |
料金目安 (60分) |
|||
e-Mobility Power | 急速普通併用プラン | 3,800円 | 25円/分 | 750円 | 3.5円/分 | 210円 |
普通充電プラン | 1,400円 | ー ※ビジター料金 |
〇90kWh以上の充電器料金 2,100円〇50kWh以下の充電器料金 1,500円 |
3.5円/分 | ||
ビジター | ー | 〇90kWh以上の充電器料金 1~5分まで:350円 以降1分あたり:70円〇50kWh以下の充電器料金 1~5分まで:250円 以降1分あたり:50円※加盟充電器をご利用時 |
1~15分まで:120円 以降1分あたり:8円 ※加盟充電器をご利用時 |
480円 | ||
EV/PHV充電サポート (トヨタ) |
急速普通プランA | 1,500円 | 60円/分 | 1,800円 | 4.5円/分 | 270円 |
急速普通プランB | 4,500円 | 50円/分 毎月90分は無料 (余った無料分は翌月まで繰越) |
1,500円 | 4.5円/分 | ||
普通充電プラン | 700円 | 利用不可 | ー | 4.5円/分 | ||
おでかけCARD | プレミア (急速・普通) |
4,500円 | 35円/分 | 1,050円 | 4.5円/分 | 270円 |
レギュラー | 1,500円 | 利用不可 | ー | 4.5円/分 |
各社により料金やサービスに違いはありますが、月会費はおおよそ1,500円~4,500円、急速充電料金は1分あたり25〜60円、普通充電料金は1分あたり3.5〜4.5円となっています。
各社の特徴的なサービスとして、トヨタでは急速普通プランBにおける毎月90分無料(繰越あり)などがあります。
充電料金は、ビジター料金だと開院に比べ1回あたりの料金が高くなることがわかります。
車種やライフスタイルによって、何度も充電が必要な場合には、充電認証カードを取得しておくのがおすすめです。
また、ビジターで利用する場合には、一時利用のためのビジターパスワードを発行する点に注意が必要です。認証カードありきでの利用となることから、ビジターで利用するケースや充電認証カードを忘れてしまった場合は手順に沿ってご利用ください。
電気自動車の充電費用シミュレーション
充電にかかる料金を説明してきましたが、実際に年間どの程度のコストがかかるかシミュレーションしてみましょう。
自宅の場合
自宅充電の場合は、電力会社のプランによって1時間あたりの電気料金が変動します。エアコンや冷蔵庫、テレビなどといった電化製品も使用しつつ、電気自動車の充電も行うため、電力量料金の適用金額が変わってくるでしょう。
例では、それぞれの電力量料金による年間の充電料金を想定したシミュレーションを行っています。
<電気自動車:日産 リーフ(グレードG)>
充電走行距離:322km(WLTCモード)
バッテリー容量:40kWh
電力消費率:322km/40kWh=8.05km/kWh
年間走行距離:12,000km
電力プラン:東京電力 スタンダードプランS
※充電認証カードは非所持
・適用電力量料金:30.00円の例(〜120kWh)
12,000km/8.05km/kWh=1,491kWh(年間に必要な電力)
1,491kWh×30.00円/kWh=44,730円/年間の料金
・適用電力量料金:36.60円の例(121〜300kWh)
12,000km/8.05km/kWh=1,491kWh
1,491kWh×36.60円/kWh=54,571円/年間の料金
自宅での充電のみで利用する場合は、年間でおよそ5万円程度となります。ただし、電力会社や料金プラン、外充電の利用によって金額は変わりますので、参考金額としてください。
充電スポットの場合
充電スポットによる充電をメインとした場合の年間充電料金シミュレーションを用意しました。今回のケースでは、急速/普通併用プランを前提に計算を行っています。
<電気自動車:日産 リーフ(グレードG)>
充電走行距離:322km(WLTCモード)
バッテリー容量:40kWh
電力消費率:322km/40kWh=8.05km/kWh
年間走行距離:12,000km
充電認証カード:e MOBILTY POWER
・急速/普通併用プラン
急速充電(90kWh)を利用
※急速充電時間はバッテリー80%の充電とする
12,000km走行に必要な電力:1,491kWh
月あたりの充電利用回数:1,491kWh/32kWh(バッテリー80%の充電)/12ヶ月=4回となります。
これらを前提に料金を計算すると、
月会費3,800円+急速充電料金25円/分×21分(32kWhの充電時間)×4回/月=5,900円/月の料金
5,900円/月×12ヶ月=70,800円/年間利用料金となります。
自宅の充電を併用せず、外充電のみの利用だと2万〜3万円ほど高くなる計算となりました。普通充電のみの利用であれば月会費が安くなるため費用は抑えられますが、長時間充電が必要となるため、状況によっては急速充電も利用したいところです。
他メーカーの充電認証サービスと比較し、料金が安くなるメーカーを選択するとよいでしょう。
充電料金とガソリン代の比較
ガソリン車から電気自動車へ乗り換える際、ガソリン代と充電料金ではコストがどれくらい違うのかは、気になるポイントでしょう。
ここでは、「ガソリン車」「ハイブリッド車」「電気自動車」を比較した、走行にかかる年間コストを算出しました。
比較車は、ガソリン車ではトヨタ ヤリス クロス、ハイブリッド車ではトヨタ プリウス、電気自動車では日産 リーフとしました。
<前提条件>
年間走行距離:12,000km
ガソリン代:174円(全国平均値:2024.2.15調査結果)
電気代:36.60円(東京電力スタンダードS 121~300kWh料金)
※電気自動車では充電認証カード費用を加味しない
日産 リーフ | トヨタ ヤリス クロス | トヨタ プリウス | |
種類 | 電気自動車 | ガソリン車 | ハイブリッド車 |
グレード | G | G | Z |
燃料消費率 (電力消費率) |
6.45km/kWh | 19.4km/L | 28.6km/L |
月あたりの費用 | 1,000km/8.05km/kWh×36.60円 =4,547円/月 |
1,000km/19.4km/L×174円/L =8,969円/月 |
1,000km/28.6km/L×174円/L =6,083円/月 |
年間想定費用 | 4,547円/月×12ヶ月 =54,564円/年 |
8,969円/月×12ヶ月 =107,628円/年 |
6,083円/月×12ヶ月 =72,996円/年 |
上記計算上、かかるコストは電気自動車<ハイブリッド車<ガソリン車という結果になりました。
ただし、電気自動車では外充電を行う場合、充電認証カードが必要となり、充電カードプラン加入の場合、会員費のみで年間30,000円〜50,000円の追加費用が必要となります。
充電料金節約術について
電気自動車を所持すると必ず発生する充電コストは、少しでも安く充電したいですよね。
ここでは、充電料金を節約し、お得に電気自動車に乗るための方法をご紹介します。
充電認証カードの見直し
充電認証カードの発行元は複数あるので、こちらを見直すことで料金を抑えることができます。
例えば、急速/普通充電プランを契約していたものの、急速充電をほとんど利用していないのであれば、プランを変えるだけで月額料金を大幅に下げられます。
例えば、e-MOBLITY POWERでは、急速普通併用プランでは月額3,800円ですが、普通充電プランでは1,400円と、月に2,400円抑えられます。
普段使用する充電スポットや自宅充電と外充電の利用比率を考え、ライフスタイルに合わせた充電カードを所持することで費用を抑えられます。
自宅の電気料金プラン見直し
昨今、エネルギー価格の高騰により、各電力会社が電気料金の見直しを行い単価が上がっています。電力会社の料金プランは、契約した当初のまま変更していない方も多いのではないでしょうか。
契約当初からライフスタイルが変化し、昼間よりも夜間に電力使用が集中している場合は、夜間プランに変更すると料金を抑えられます。また、ガスと電気をまとめることで割引が適用されるなど、各電力会社によってお得なサービスもあります。
面倒ではありますが、日々使用する電気だからこそ見直してみることも大切です。
エコドライブの推奨
電気自動車の電力消費量を抑えるために、エコドライブを実施することも大切です。
エンジンがない電気自動車において特に影響する運転操作は、暖房の利用です。寒さの厳しい季節は、電気自動車にとっては苦手な環境となります。暖房による電力消費は、思いのほかウェイトを占めるため、冬のバッテリー管理には注意が必要です。できるかぎり、エアコン等のパワーを控え、シートヒーターやハンドルヒーターを活用し、電費を意識した運転を心がけましょう。
もちろん、アクセル操作による影響もあるので滑らかな加速、停止もポイントです。
まとめ
電気自動車の充電には、自宅での電力量料金、外充電のための充電認証カード費用、利用料金が発生します。
ガソリン車と比較すると、電気自動車の充電料金のほうが比較的安くなる傾向であることがおわかりいただけたかと思います。
昨今の物価高によりエネルギーコストが底上げされ、電気料金の単価も上がってきました。少しでも、料金を抑えるためにも料金プランや充電認証カードの見直しなどで支出を減らせるのは、電気自動車ならではかもしれません。
電気自動車が浸透しつつあるものの、まだまだガソリン車やハイブリッド車のほうに人気があるのが現状です。今後、電気自動車がさらに普及していくにつれ、どのように変化していくか楽しみですね。
よくある質問
料金の低いおすすめ充電スポットは?
各社月額費と充電料金に差はありますが、急速充電を使うかどうかで一番差が出るでしょう。また、充電スポットを利用する頻度によっても違うので、それぞれのライフスタイルに合わせて選択しましょう。
中でも急速充電を行う機会が多い方は、日産自動車からサービス展開されている「ZESP3」がおすすめです。
多くのメーカーは月額会員費+従量課金となっているなか、「ZESP3」は、急速/普通充電の利用可能回数がプランに含まれています。その分月額利用料金は高めの設定となっていますが、外充電を多く利用する方であれば、「ZESP3」の充電認証カードを選択するとよいでしょう。
カード名 | プラン | 登録手数料 | 月会費 | 都度充電利用料金 |
ZESP3(日産) | プレミアム100 | 1,500円 | 4,000円 | 急速:44円/分 (急速充電100分まで無料) 普通:3.3円/分 (普通充電600分まで無料) |
プレミアム200 | 6,000円 | 急速:38.5円/分 (急速充電200分まで無料) 普通:3.3円/分 (普通充電600分まで無料) |
||
プレミアム400 | 10,000円 | 急速:33円/分 (急速充電400分まで無料) 普通:3.3円/分 (普通充電600分まで無料) |
||
シンプル | 1,000円 | 急速:99円/分 普通:3.3円/分 |
ガソリン代と充電料金はどちらが安い?
ガソリン代と充電料金では、充電料金のほうが安くなる傾向があります。ただし、車種やライフスタイルによっては、ハイブリッド車のほうがお得になるかもしれません。
例として、
日産 リーフの想定される年間充電料金(自宅)は、およそ55,000円
トヨタ プリウスの想定される年間ガソリン代は、およそ73,000円
となりますが、リーフには認証カードの会員費を含めていません。日産充電認証サービスでもある「ZESP3」のプラン「プレミアム100」を利用した場合以下のようになります。
月額費4,000円×12ヶ月=48,000円/年
充電料金55,000円+会員費48,000円=10,3000円
単純に計算すると、実際は外充電を利用する分自宅の電力使用量が減るため、料金としては安くなりますが、ハイブリッド車のほうがランニングコストが安い場合もあります。
もちろん車種によっては、電気自動車のほうが安く済む場合もあれば、そうでない場合もあります。
電気自動車の充電料金を安くするためには、自宅充電の場合は電力プラン、外充電の場合は充電認証サービスの見直しをしていくとよいでしょう。