誰もが安全な車に乗りたいと思っています。車の安全性を左右している安全装置とはいったい何でしょうか。メーカーによって特徴が異なる車の安全装置について解説いたします。安全装置の優秀な車を5選ご紹介しますので、新車または中古車購入の際にお役立ていただければ幸いです。
目次
車の安全装置が必要な理由
ここ最近、新車販売している車のほとんどは安全装置を標準装備しています。高級車だけではなく普通車や軽自動車にも安全装置が搭載されています。メーカーや車種によってはオプション選択となるため、追加料金を取られることもあるでしょう。
安全運転を心がけていれば安全装置は必要ない。果たしてそうでしょうか。確かに運転手一人一人が注意することは大切ですが、事故が起こるリスクをできるだけ減らすことも運転手の責任です。年齢や体調不良ゆえに判断ミスを招くことも少なくありません。
最近では、高齢者の踏み間違いによる事故が相次いでいます。75歳以上のドライバーが過失となった交通死亡事故は2018年だけでも460件発生しているのです。車の安全装置が充実していれば、万が一事故を起こしてしまった場合にも被害を最小限に抑えることができます。ですから、車の安全装置は絶対に必要なのです。
車の安全装置には2種類ある
安全装置には2種類あります。それはパッシブセーフティとアクティブセーフティです。それぞれの安全装置の特徴と具体的な装置の名称を紹介します。
パッシブセーフティ
パッシブセーフティとは事故が起きた際に被害を最小限に抑える安全装置です。運転手や搭乗者などの事故当事者の被害を抑えることができます。
3点式シートベルト
パッシブセーフティに代表的なものはシートベルトです。50年以上昔にボルボが開発した安全装置であり、今や世界中の自動車に採用されており、日本では運転手や助手席に乗っている人のシートベルト装着は義務化されています。
3点式シートベルトは近年、さらに安全性能が進化しており緊急時には自動的にロックがかかり巻きとりが行われる装置がプラスされています。また。衝突時にはシートベルトにたるみができないように自動巻きとりが可能なプリテンショナーが装備されるようになるなど、事故時に安全が確保できるよう技術は向上しています。
SRSエアバッグ
SRSエアバッグとは事故が起きたときの衝撃で頭を打たないように、衝撃防止をこなう安全装置のことです。これまで運転席には標準装備されてきましたが、最近では助手席にも装備されるようになっています。衝突されたときの衝撃で、事故が発生したのちにハンドルなど硬いものに頭をぶつけて脳震盪を引き起こすなどの二次被害が生じないようにエアバッグは必要です。
高級車の安全装置の中にはSRSエアバッグのみならず<カーテンエアバッグ>や<ニーエアバッグ>、<サイドエアバッグ>などのあらゆる方向から頭以外の体の部分も守れるエアバッグの装着も可能なものがあります。
歩行者障害低減ボディ
歩行者傷害低減ボディとは、万が一歩行者と接触してしまった際に歩行者に与える傷害を低減するためにボディが加工されているものです。少しでも軽い衝撃で済むようにエネルギー吸収剤が配置されているボディは今や珍しい安全装置ではありません。
また、歩行者の身長によっては接触した際に頭が当たってしまうかもしれないボンネットフードには変形しやすい素材を用いることによって、歩行者の命を奪ってしまうリスクを抑えられています。
衝突安全ボディ
衝突安全ボディとは正面衝突や側面衝突をした時に運転手や乗員などの事故当事者への衝撃をできるだけやわらげるために開発されているボディのことです。メーカーごとに工夫の仕方は異なり独自の名称を持っていますが、どれも安全装置の一つです。
<全方位衝突安全強化ボディ>や<新環状力骨構造ボディ>、<衝撃吸収位相制御構造ボディ>といった名称で呼ばれることもあります。衝突時にあえてつぶれやすくすることによって衝撃を和らげるクラッシャルブルゾーンと、高強度のキャビンで頑丈なボディにより乗員を守るセーフティゾーンの2種類があります。
チャイルドシート
チャイルドシートは標準装備される安全装置ではありませんが、小さいお子さんがおられる方には必須の安全装置です。標準装備されている3点式シートベルトでは小さいお子さんの安全を守ることはできません。
チャイルドシートを使用していなかった場合に事故が起きたときの死亡率はチャイルドシートを使用していた場合の4倍以上となっているため、必ず使用するようにしましょう。ちなみに、平成12年から6歳未満の乳幼児はチャイルドシートを使用するよう義務付けられています。
アクティブセーフティ
アクティブセーフティとは事故が起きてしまう前に、事前に働く安全装置です。車が横滑りしたり誤発進したりすることを防ぐ安全装置を含んでいます。
アンチロックドブレーキングシステム
通称<ABS>と呼ばれるアンチロックドブレーキングシステムは急ブレーキを踏んだ際にタイヤがロックしてしまわないように制御してくれる安全装置を指しています。急にブレーキを思いっきり踏んでも自動的にブレーキの加減が調整されるのです。
ですから、急ブレーキをしたばっかりに車が横滑りをして反対車線に乗り出し甚大な交通事故を引き起こすというケースをできるだけ防げるでしょう。
前輪駆動システム
前輪駆動システムは<AWD>とも呼ばれています。オフロード走破性が高い4WDなら聞いたことがあるかもしれませんが、世界的に定着している駆動システムは<AWD>という名称です。すべてのタイヤに駆動力が伝わるため滑りやすい雪道や雨の日のカーブも安定した走りが可能です。
最近ではFFまたはFRかAWDにするかの駆動方式の選択が車種ごとにできるようになっているため、安全装置の充実を求めるのであれば前輪駆動システム搭載車を選ぶと良いでしょう。
トラクションコントロール
トラクションコントロールとは車のスリップを防止してくれる安全装置のことです。タイヤが地面から離れ空転していることを自動的に感知しエンジンの出力を制御してくれます。横滑りなどによる事故被害を抑えられるでしょう。
特に高速道路を良く走行する方の場合、雨天時はタイヤが高速回転するとスリップしやすいためトラクションコントロール装置は重宝されます。
横滑り防止装置
トラクションコントロールと組み合わせて安全装置が搭載されていることの多い横滑り防止装置もアクティブセーフティの一つです。カーブを曲がる際にスピードを出し過ぎていたり、スリップの原因となるものがあったりした場合、横滑りのふくらみを防止してくれます。
走行ラインが大きく膨らむと対向車と衝突してしまう恐れがあるため非常に危険です。安全運転を心がけながらも、万が一の際には走行のふくらみを制御してくれるのが横滑り防止装置です。
レーンキーピングアシスト
レーンキーピングアシストシステムは通称<LAS>と呼ばれています。車線を踏み越えそうなときにはステアリングをアシストしてくれますし、警告音を発して鈍った判断力を取り戻させてくれます。
ハンドル操作をアシストする際には、車線逸脱回避支援システムまたは車線の中央線に沿って走るようにライントレースしてくれるシステムの2種類が基本です。特に高速道路や自動車専用道路を時速60㎞以上で走行している際に役立つ安全装置と言えるでしょう。
<メーカー別>安全装置の特徴
安全装置の名称や特徴はメーカーによって異なります。主要な国産メーカーを例に車の安全装置の特徴をご紹介しましょう。
ホンダ
ホンダの安全装置は<Honda SENSING>という名称で呼ばれています。ミリ波レーダーと単眼カメラが搭載されているため、走行中の周囲の状況を認識し安全運転をサポートしてくれることでしょう。
Honda SENSINGの主な安全装置の特徴は次の通りです。
- 前走行者との安全な車間距離の確保
- 車線の真ん中を走行できるようにアシスト
- 衝突回避のための自動ブレーキ
- 誤発進による衝突を防止
- 歩行者に近づきすぎないように回避
- カーブのはみ出し走行の防止
- 前走行車の走り出しを通知
- 道路標識の見落としを防止・お知らせ
トヨタ
トヨタの安全装置は<Tooyota Safety Sense>という名称で呼ばれています。この安全装置を搭載しているアルファードやヴェルファイアは2-18年度予防安全性能評価で大賞を獲得しています。さらに、パーキングサポートブレーキも搭載しているプリウスは追突事故の9割低減に成功しているという実績が明らかな安全装置です。
Tooyota Safety Senseの主な安全装置の特徴は次の通りです。
- 自動被害軽減ブレーキ
- ハンドル操作サポート
- 車線はみ出しアラート
- 追従ドライブ支援機能
- ハイビームとロービームの自動切替
- 標識読み取りディスプレイ
- 先行者発進アラーム
日産
日産は日本と世界を先駆け安全装置に取り組んできた歴史ある国産メーカーです。1990年代にABSを標準装備化し、1997年にはブレーキアシストシステムを導入しています。日産は日本初のインテリジェントクルーズコントロールを開発し、搭載したメーカーであり、2001年には世界初のレーンキープサポートシステムを開発しました。
日産のサポカーに標準装備されている安全装置の特徴は次の通りです。
- 前方車両・歩行者の検知・回避操作のアシスト
- 踏み間違い衝突防止アシスト
- 走行車線逸脱の警告換気
- ハイビームアシストによる歩行者の早期発見
スバル
スバルは独自の総合安全思想を安全装置に生かしています。2018年度のJNCAP衝突安全性能評価ではスバルフォレスターが大賞を受賞しました。2030年には死亡交通事故ゼロ問目標を掲げて4つの項目で安全装置を開発しています。
- 運転しやすしポジションやシートなどの細かい配慮による<0次安全>
- AWD・プリクラッシュブレーキ・後退時ブレーキアシストなどによる<走行安全>
- 運転支援システムアイサイトによる<予防安全>
- 新環状力骨構造ボディ・パッシブセイフティによる<衝突安全>
自動車アセスメント<高得点国産車ベスト5>
毎年、国土交通省と自動車事故対策機構が発表している自動車アセスメントから安全装置の優秀な車を見つけることができます。この評価試験では<予防安全性能評価>・<衝突安全性能評価>の2種類が評価されます。では、2018年度前期の発表結果から安全面で高得点を獲得している国産車を紹介しましょう。
トヨタ カローラスポーツ
対歩行者 | 65.0 |
対車両 | 32.0 |
車線逸脱抑制 | 16.0 |
後方視界情報 | 6.0 |
高機能前照灯 | 1.4 |
踏み間違い加速抑制 | 2.0 |
合計点 | 122.4 |
トヨタのカローラ数ぽーつは<Toyota Safety Sence>の第二世代を搭載しており、夜間対応可能な単眼カメラ搭載車となっています。ハイビームとロービームの自動切り替え装置も標準装備されており、静止物への踏み間違い加速抑制効果もあるため、高得点を獲得している安全な車です。
スバル フォレスター
対歩行者 | 61.3 |
対車両 | 32.0 |
車線逸脱抑制 | 16.0 |
後方視界情報 | 6.0 |
高機能前照灯 | 5.0 |
踏み間違い加速抑制 | 2.0 |
合計点 | 122.3 |
スバルの安全装置である<EyeSight>を標準装備しているフォレスターは2018年にモデルチェンジが行われたばかりの新モデルが評価されています。ステレオカメラが搭載されており、対向車や前走車を素早く認識し照射範囲を調整することができます。踏み間違い加速抑制システムは前進・後進両方に対応しており高い評価を得ています。
ホンダ N−VAN+STYLE FUN
対歩行者 | 64.0 |
対車両 | 32.0 |
車線逸脱抑制 | 16.0 |
後方視界情報 | 6.0 |
高機能前照灯 | 1.4 |
踏み間違い加速抑制 | 1.2 |
合計点 | 120.6 |
ホンダの安全装置がグレードアップした<+STYLE Honda SENSING>を搭載しているN‐VAN +STYLE は非常に高い安全評価を得ています。単眼カメラを搭載し、CMOSイメージセンサーのチューニングが行われているため、吸収色の服を着ている歩行者も認識しやすくなっています。夜間歩行者の検知精度が高く、接触防止面でとても安全な車と言えるでしょう。
ホンダ N−VAN L
対歩行者 | 64.0 |
対車両 | 32.0 |
車線逸脱抑制 | 16.0 |
後方視界情報 | 6.0 |
高機能前照灯 | ー |
踏み間違い加速抑制 | 1.2 |
合計点 | 119.2 |
先ほど紹介したN-VAN +STYLE の安全装置からワンランクダウンしたものですので、評価が少し下がって言いますが、オートハイビームを搭載していないということ以外では+STYLE とほとんど変わりありません。グレードを一つ下げることによって予算を抑えたい時に候補に入れやすい安全な車でしょう。
マツダ アテンザ
対歩行者 | 52.7 |
対車両 | 32.0 |
車線逸脱抑制 | 16.0 |
後方視界情報 | 6.0 |
高機能前照灯 | 5.0 |
踏み間違い加速抑制 | 2.0 |
合計点 | 113.3 |
2018年にマイナーチェンジが行われたマツダのアテンザには<アドバンスト・スマート・シティ・ブレーキ・サポート夜間歩行者検知機能付>が搭載されています。また、高機能な前照灯を装備しており、車速にあわせて3パターンのライト制御が可能です。そのため夜間の歩行者を早めに検知して近づきすぎないように制御することができます。
まとめ
踏み間違いなどのちょっとした操作ミスによる交通事故が多い今の時代だからこそ、車の安全装置の重要性を見直す必要があるでしょう。完璧に安全な車は存在しませんが、安全装置の特徴を理解しておくだけでも、安全運転につながるはずです。できるだけ安全な車を選んで快適なドライブを楽しみましょう。