車を売却する時には、ただ買取り業者に車のキーを渡すだけでなく、名義変更や業者に車を譲り渡したことを証明するために、必要書類を用意します。特に印鑑証明は、実印が車の所有者のものであることを示す、重要な書類です。実印と印鑑証明は、車を売る時には必ず必要なもの。それは、一体なぜなのか?売却時の必要書類と一緒に解説します。
印鑑証明書とは
印鑑証明とは、実印が、その人物を示すための印であることを、証明するための書類です。正しくは<印鑑登録証明書>といいます。15歳以上になると、印鑑屋さんに行き、既製品ではないオーダーメイドの実印を製作して購入。用意した実印を持って、住んでいる地域の市区町村へと登録したものが、本人であることを示す実印です。
市区町村に登録した一人にただ一つの印鑑が実印です。その実印が、本人と結びつくものだと証明する書類が、印鑑証明です。実印は、大きなお金が必要な取引や、大切な契約などで、信用を確実にする印鑑。
重要な書類に押した実印には、必ず印鑑証明を添えて、本人の実印であることを証明します。印鑑証明と一緒に用意することで、その印鑑は実印となり、信用を獲得することが可能です。
印鑑証明書は2枚必要!
車を売却する時には、資産を取引するとみなされることから、実印と印鑑証明が必要となります。実印を押すのは、車の所有者が買取業者などに変わる、名義変更の手続きを業者に代行してもらうための<委任状>。車を相手に譲り渡したことを示す、<譲渡証明書>の2つです。
車を売却する際には、それぞれの書類に対して、本人の実印であることを示すために、印鑑証明が2枚必要となります。ただし、軽自動車の場合は実印ではなく、認(みとめ)印でもよいため、印鑑証明を用意することはありません。同じ自動車でも、軽自動車は普通車とは異なり、国土交通省に登録する必要がなく、軽自動車検査協会に届け出をするだけでOKとなっています。
車も不動産と同じで、法律上、登記(登録)をする必要のないものは、資産(動産)には該当しないため、実印は不要です。
どうして印鑑証明書がいるのか?
車を売却する際に、印鑑証明が必要な理由は、車の持ち主の実印を書類に押すためです。それが、役所に登録した本人の実印だと示すため、印鑑登録証明書(印鑑証明)がいります。その使い道は、車の名義変更を、業者に代行してもらうための委任状。車を買取業者に譲り渡したことを示す、譲渡証明書の2つです。
印鑑証明書を提出するときの注意点
車を買取ってもらう時に、絶対に提出しなければならない印鑑証明ですが、それにはいくつかの注意点があります。
取得からの有効期限
買取り業者などに車を売却する際に、提出する印鑑証明は、発行後から3カ月以内のものと指定されます。印鑑証明そのものに有効期限はありませんが、その実印が本人とつながることを示すための書類です。発行されてから、あまりにも月日が経過した印鑑証明では、信用性が薄まります。印鑑証明は、必要な時に、その都度発行してもらいましょう。
旧住所での印鑑証明書は無効
引っ越しをしたなどで印鑑証明に記載された住所が、旧住所のままになっている場合でも、印鑑証明は無効になりません。その際は、印鑑証明とともに住民票の写しを提出し、新しい住所に変更となっていることを示します。
印鑑登録をしていない・登録した印鑑を失くした場合は?
車を売るときに必要な印鑑証明を提出する際に、まだ印鑑登録をしていなかった場合は、あらためて実印の登録を役所で行います。外国人の方でも、住んでいる市区町村に外国人登録がしてあれば、印鑑登録をすることが可能です。まず、印鑑屋さんへ行き、車を売る本人の実印を作ってもらいましょう。実印として登録する印鑑には、いくつか注意点があります。
実印は一生使える品質の良いものを
一つは、実印に使用する印鑑の材質で、印の部分が変形しやすいゴム製のものや、欠けやすいプラスチック製のものは登録できません。実印に適した材質は、男性なら【黒水牛(の角)】【象牙】【チタン】、女性では【オランダ水牛】【琥珀】【水晶】などが一般的です。
安価なものでは、【薩摩本柘(さつまほんつげ)】や【彩樺(さいか)】といった木製のものがあり、4,000~5,000円で製作が可能。実印は本人だと示すための大切なもの、一生使える質の良いものを選ぶのがおすすめです。また、実印では、その彫り方も重要な要素です。
実印は、その人には唯一の大切な印鑑ですので、確かな技術を持った、信用できる印鑑屋さんで製作してもらいましょう。男性の場合は、偽造防止という観点からフルネームで彫るのがベスト。女性では、結婚をすると苗字が変わるため、名前のみを掘ってもらうのが良いでしょう。
実印は即日登録が可能
実印が完成したら運転免許証など身分証明書を持って役所へ行き、印鑑登録をします。登録に掛かる所要時間は、5分~10分程度。登録が完了したら同時に発行される印鑑登録カードと、200~500円の手数料を払って、印鑑証明を取得します。時間は3分ほどです。
もしも、まだ実印の登録が済んでいなくても、即日登録をして印鑑証明を発行することが可能です。また、登録済みの実印を紛失してしまった場合は、登録をした市区町村窓口に紛失届を提出します。そうすることで、印鑑証明の発行を停止し、紛失した実印が悪用されることを防ぎます。
その後、新たに作ってもらった実印を持って、新たに印鑑登録を行えば、印鑑証明の発行が可能です。実印を紛失した時は、必ず警察に紛失届や盗難届を提出しましょう。
提出した印鑑証明書は悪用されない?
印鑑証明書は、本人の実印かどうかを示す、大切な書類です。実印が悪用された場合は、知らないうちに借金の連帯保証人にされてしまったり、本人名義で勝手にローンを組まれたり……本人名義で、車や不動産の購入や売却が行われるといったケースがあります。
実印と印鑑証明の両方がある場合、これらの犯罪に使われる可能性が高く、特に連帯保証人にされる事例が多いです。車を売却する際に提出する、印鑑証明は悪用されないのかと不安になりますが、心配は無用です。
車を売るときに提出する印鑑証明が悪用されることはない
印鑑証明は、書類に押印した印鑑が実印だと証明するため、名義変更の委任状や譲渡証明書とともに、運輸支局に提出します。ここで気になるのは、買取業者によって名義変更を代行するための委任状用に、印鑑登録証明書が1通で良い場合と2通必要な場合とがあることです。そうなると、「なぜ、2通も必要なのか?」と疑ってしまいます。
これは買取り業者が、自動車税の還付金の請求権利を、元の所有者から譲渡するためです。その際は、譲渡証明書ともに、印鑑証明を提出しなければなりません。車を売る際には、還付される自動車税の分を加味した、買取り金額を受け取るため、実質的にユーザーが損することはないでしょう。
中古車を海外へと輸出する場合に印鑑証明が必要
しかし、自動車税の還付は、車を廃車にしなければ受けることはできません。買取り業者が、自動車税の還付を受けるときは、車を海外へと輸出するためです。輸出をする際は、国内で一時抹消(廃車)登録を行うため、自動車税の還付が受けられるようになります。
このように、買取業者から頼まれた印鑑証明は、車の売却手続きには絶対に必要なため、決して悪用されることはありません。
車を売るときのその他必要書類
車を売るときには、印鑑証明の他にも、必要な書類があります。注意すべきポイントのため、普通自動車と軽自動車に分けて説明します。
普通自動車の場合
・自動車検査証(車検証)
自動車検査証は、車の所有者や仕様、形式といった事項を示す書類です。車を売るときは、まず車検証がなければ話は進みません。車検証は、常に車内に保管しておくことを、法律で義務付けられています。車検証は、ほとんどの場合、助手席前のグローブボックスに収納されています。万が一、車検証を紛失してしまった場合は、運輸支局に申請すれば、再交付が可能です。
・自動車税納税証明書
車を売るには、自動車税を収めた納税証明書が必要となります。もし、自動車税を支払っていない場合は、未納分を収めなければ、車を売ることができません。自動車税の支払い用紙を紛失した時は、各都道府県の税事務所に再発行してもらいます。
・自賠責保険証
自賠責保険が切れていた場合は、名義変更ができないため車を売ることができません。自賠責保険証も、車検証と一緒に、グローブボックスに入れてあります。もし紛失してしまった時は、保険会社に連絡をして、相談をします。加入している保険会社が不明な場合は、購入したディーラーや販売店に問い合わせてみましょう。
・委任状と譲渡証明書
車の売却時には、売却した車の名義変更を、買取り業者などに代行をお願いする委任状。車の譲渡を証明する、譲渡証明書が必要です。いずれにも、必ず実印を押印。これら二つの書類は、車を売却する買取店や、自動車ディーラーでもらいます。
・住民票の写し
引っ越しをしたなどで、車検証や印鑑証明の住所が、現住所と異なっている時に必要です。
・自動車リサイクル券の預託証明書
車検を受ける際に必要な、自動車リサイクル券の預託証明書も、車を売るときには必要です。自動車リサイクル券預託証明書も、車検証と一緒にグローブボックスに入れてあります。
軽自動車の場合
軽自動車の場合は、委任状と譲渡証明書に押印する印鑑が、認印でも問題がないため実印や印鑑証明は不要です。
・自動車検査証(車検証)
・自賠責保険証
・委任状と譲渡証明書
・住民票の写し
・自動車リサイクル券の預託証明書
必要書類の準備は余裕を持って!
車を売却する際には、手続きをするための必要書類を用意しなければなりません。特に、印鑑証明は、委任状と譲渡証明書に押印する実印が、本人のものだと証明するために欠かせない書類です。ただし、軽自動車では、普通車とは違って資産に該当しないため印鑑証明は不要となります。
どの書類も、取得するのにそれほど手間はかかりませんが、いざという時に慌てないように余裕を持って準備しておきましょう。