中古車の購入を検討しているときや自分の愛車を売却しようと検討しているときに、耳にする「名義変更」という言葉。意味は「名義を変更する」という呼んで字のごとくなのですが、どんな時にどのように行うのでしょうか?名義変更が必要なタイミングから方法、そして名義変更での注意点をお伝えします。
車の名義変更とは?
公道を走行している車は必ず、所有者が登録されています。所有者を登録しなければナンバーが取得できないからです。車検や保険など他の条件に問題が無ければナンバーが取得されている車は、基本的に所有者以外が運転して公道を走らせることはできます。
しかし登録されている所有者以外の人が、その車を所有し続けるたり乗り続けると、万が一の事故や盗難に遭ったときなどに色々と厄介なことが起こります。そのために、車の所有者が変わった時には、速やかに名義を変更する「名義変更」を行う必要があるのです。
名義変更には期限がある!
実は、名義変更には法律で決められた期限があります。道路運送車両法第十三条において「自動車について所有者の変更があつたときは、新所有者は、その事由があつた日から15日以内に、陸運局長の行う移転登録の申請をしなければならない。」とあります。
車の名義変更はどんな時に必要?
個人で車の売買や譲渡する場合
ディーラーや中古車販売店、買取専門店を利用して愛車を購入もしくは売却する場合は、利用した業者が名義変更を代行してくれることが一般的なので、自分で行うことはまずありません。
個人の間で車を売買する場合には、自分で名義変更する必要が出てきます。なぜなら売られる車は売り手の名義になっているからです。売買するだけでは勝手に名義は変更されませんので、基本的には買い手側が所定の手続きに沿って名義変更を行わなければなりません。親や親せき、友人から譲り受ける場合でも、所有者が変わるので名義変更は必要になります。
車を所有している身内が亡くなった場合
車を所有していた親や兄弟が何らかの事情で亡くなってしまった場合も、速やかに名義変更する必要があります。
車の名義変更を放置するとトラブルの元
車の名義変更をすぐに行わず放置すると、面倒なトラブルが発生する可能性があります。考えられるトラブルは以下になります。
自動車税
自動車税の支払いは毎年4月1日現在の所有者に自動車税納税通知書が届きます。もし購入した車を名義変更せずに4月1日を超えてしまったら、自動車税納税通知書は旧所有者の住所に届きます。旧所有者から連絡が入れば良いですが、連絡もなく納税もされないままでは、車検が受けられなかったり、延滞金が発生したり、最悪の場合には差し押さえを受けてしまいます。車を手に入れたら速やかに名義変更しましょう。
任意保険
すぐに車に乗る必要があるため、名義変更前に任意保険に加入することが可能なのですが、のちに速やかに名義変更することを約束し、車の所有者は自分だとして加入します。しかしその後、面倒になり名義変更を後伸ばしにしていると、保険会社から名義変更の催促が来ます。催促も無視して放置すると、保険契約における車の所有者を旧所有者に強制的に訂正されてしまう可能性があります。
さらには、旧所有者の等級を引き継ぐことにもなってしまいます。なぜなら保険会社は、旧所有者が事故などで保険を使用して等級が下がることで保険料が上がることを逃れるために、保険の契約者だけを変えたのではないか?と考えるためです。実際はそうでなかったとしても、名義変更を放置しておくとそうなってしまいますので、速やかに名義変更しましょう。
盗難
名義変更しないまま車が盗難に遭ってしまうと厄介なことになります。盗難された場合、警察に盗難届を出します。運よく車が見つかったとしても、名義変更していないと面倒なことになります。なぜなら、盗難届を出している所有者と登録されている所有者が違うからです。
登録されている所有者と盗難届を出した人が違うと、警察は当然疑います。あなたは、自分が本当の所有者であることを証明しなければなりません。疑いを晴らすためには、旧所有者から購入した売買証明書などを提出する必要が出てきます。こうなると旧所有者にも迷惑をかけてしまいます。また、盗難に対する補償を保険会社から受けられたとしても、手続きなどで保険金の受取が遅くなってしまいます。面倒なことになる前に、速やかに名義変更をしましょう。
車の名義変更に必要な書類と方法そして費用
車の名義変更は代行業者などに任せる方法と、自分自身で行う方法があります。それぞれに必要な書類や費用は変わります。また、名義変更する車が普通自動車か軽自動車かでも必要な書類と費用は変わります。それぞれの違いを具体的にご紹介します。
業者などに車の名義変更を依頼する場合
車をディーラーや中古車販売店などの業者から購入した場合は、代行してくれることがほとんどなので任せるだけです。個人の間で車を購入したり、譲りうけた場合でも、代行業者に依頼すれば手続きは代行してくれます。ただし、どちらも必要な書類を自分で用意する必要があります。業者に代行してもらう場合に必要な書類をご紹介します。
必要書類(普通自動車の場合)
- 自動車検査証(有効期間のあるもの)
- 譲渡証明書(旧所有者の実印の押印があるもの)
- 旧所有者の印鑑登録証明書(発行後3ヶ月以内のもの)
- 委任状(旧所有者の実印を押印が必要)
- 新所有者の印鑑登録証明書(発行後3ヶ月以内のもの)
- 委任状(新所有者の実印を押印が必要)
- 自動車保管場所証明書(警察署証明の日から40日以内のもの)
自動車保管場所証明書は、代行業者によっては取得の代行をしてくれる場合があります。その場合は自分で用意する必要は無くなります。
必要書類(軽自動車の場合)
- 自動車検査証(有効期間のあるもの)
- 新所有者の印鑑
- 新所有者の住民票の写し、もしくは印鑑(登録)証明書(どちらも発行後3ヶ月以内のもの)
- 旧所有者の印鑑、もしくは申請依頼書の旧所有者の欄に押印したもの
- ナンバープレート(旧所有者と新所有者の住所の管轄が異なる場合のみ)
軽自動車は普通自動車と違い認印で対応でき、実印や印鑑登録証明は不要です。車庫証明と呼ばれる自動車保管場所届出書はお住まいの地域によっては必要になる場合があります。
費用
代行業者に名義変更を依頼した場合、依頼する業者や代行してもらう範囲にもよりますが、基本的なプランで15,000円前後の代行費用が掛かります。自動車保管場所届出書まで代行依頼すると、30,000円前後の代行費用になるでしょう。
自分で車の名義変更をする場合
代行業者に任せれば楽ですが、代行費用を取られてしまいます。できるだけ費用を安く抑えたいのであれば、自分で名義変更を行うことになります。自分で名義変更を行う方法ですが、普通自動車の場合は管轄の陸運支局か自動車検査登録事務所、軽自動車の場合は管轄の軽自動車検査協会に必要書類を持参し手続きします。自分で名義変更する場合に必要な書類をご紹介します。
必要書類(普通自動車の場合)
- 自動車検査証(有効期間のあるもの)
- 譲渡証明書(旧所有者の実印の押印があるもの)
- 旧所有者の印鑑登録証明書(発行後3ヶ月以内のもの)
- 委任状(旧所有者の実印を押印が必要)
- 新所有者の印鑑登録証明書(発行後3ヶ月以内のもの)
- 新所有者の実印
- 自動車保管場所証明書(警察署証明の日から40日以内のもの)
- 申請書(OCR申請書第1号様式)
- 手数料納付書
自分で名義変更する場合には、代行依頼するときよりも書類が多くなります。具体的には、申請書と手数料納付書が追加で必要です。これらは申請を出す陸運支局か自動車検査登録事務所で当日に入手できます。ちなみに申請書は、陸運支局のホームページからダウンロードして事前に入手することも可能です。
必要書類(軽自動車の場合)
- 自動車検査証(有効期間のあるもの)
- 新所有者の印鑑
- 新所有者の住民票の写し、もしくは印鑑登録証明書(どちらも発行後3ヶ月以内のもの)
- 旧所有者の印鑑、もしくは申請依頼書の旧所有者の欄に押印したもの
- ナンバープレート(旧所有者と新所有者の住所の管轄が異なる場合のみ)
- 自動車検査証記入申請書(軽第1号様式)
- 軽自動車税(種別割)申告書
- 軽自動車税(環境性能割)申告書
軽自動車の場合も自分で名義変更する場合は、代行業者に依頼するときよりも書類は増えます。具体的には、自動車検査証記入申請書、軽自動車税(種別割)申告書、軽自動車税(環境性能割)申告書が追加で必要です。これらは当日に申請を出す軽自動車検査協会で当日に入手できます。ちなみに自動車検査証記入申請書は、軽自動車検査協会のホームページからダウンロードして入手することも可能です。
費用
自分で名義変更を行う場合の費用は、揃える書類にかかる費用と手数料、そして申請に行くための交通費になります。交通費は人によって違いますので、揃える書類にかかる費用と手数料について具体的にご紹介します。
普通自動車の場合は、手数料納付書で500円、印鑑登録証明書発行1通につき300円、自動車保管場所証明書で2,000円の合計2,800円になります。軽自動車の場合は、住民票の写し、もしくは印鑑登録証明書発行で300円のみです。手数料はかかりません。
なお、住民票の写しや印鑑登録証明書、自動車保管場所証明書はお住まいの地域によってかかる費用は多少ですが違ってきます。
車の名義変更での注意点
車の名義変更の手続きは書類を揃える面倒なところもありますが、理解できればそれほど難しいものではなく自分でも行うことは可能です。しかし、以下のような場合には注意が必要になります。
旧所有者の住所・氏名が自動車検査証と印鑑登録証明書で違う場合
旧所有者の住所が違う場合は、自動車検査証記載の住所から印鑑登録証明書記載の現住所までの繋がりが分かる、旧所有者の住民票が追加で必要になります。
旧所有者の氏名が違う場合は、自動車検査証記載の氏名から印鑑登録証明書記載の現氏名への変更が記載された、旧所有者の戸籍謄本が追加で必要となります。
旧所有者と新所有者の管轄が違う場合
車のナンバープレートは、住んでいる地域を管轄している陸運局で決まります。旧所有者と新所有者の住んでいる地域を管轄している陸運局が違う場合、ナンバープレートを変更する必要があります。普通自動車はリアのナンバープレートのみ封印を受ける必要がありますので、名義変更する車を持ち込む必要があります。名義変更によるナンバープレートの変更費用は1,500円程度になります。
ナンバープレートを返納できない場合
盗難や紛失によりナンバープレートを返納できない場合は、ナンバープレートの盗難や紛失した時点での旧所有者の理由書が必要になります。
車検切れの場合
普通自動車の場合、車検が切れた状態の車では名義変更ができません。車検証を有効にする必要があります。つまり、車検を受けてから名義変更するという順番になります。車検を受けるのは、旧所有者が行う方が面倒がなくスムーズに行えるのですが、手放す車に多くの費用と手間をかけたがらないことがほとんどです。
そのため、買い手側、譲渡される側の新所有者が車検の対応をすることになります。車検から名義変更まで全てを業者に代行することも可能ですが、かなりの費用が掛かります。自分で行う場合は車検切れの車を動かすために、短期間(1か月)の自賠責保険の加入し仮ナンバーの取得を行い、所轄の陸運支局へ持ち込んで車検を受けます。
軽自動車の場合は、車検切れのままでも名義変更は可能です。しかし、公道走行するには車検を受ける必要がありますので、普通車と同じく、短期間の自賠責保険に加入し仮ナンバーを取得して所轄の軽自動車検査協会に持ち込みます。
名義が故人の場合
名義が故人の場合、その車を相続することになりますので、所有者の死亡確認および相続人全員が確認できる戸籍謄本か戸籍の全部事項証明書、遺産分割協議書が必要になります。故人が所有していた車にとても価値がある場合は、相続や税金などでも大変になりますので気を付けましょう。
名義が第三者になっている場合
個人間で車の売買や譲渡を行うときに起こり得る注意点として、旧所有者が車をローンで購入している場合です。旧所有者がまたローンを返済中の場合はもちろん、すでにローンを完済していても所有者の名義がローン会社や自動車販売店などになっている場合があります。
すでに旧所有者がローンを完済しているなら、すぐに第三者から旧所有者に名義変更ができますので、その後の旧所有者から新所有者への名義変更も速やかに行えます。しかし、ローンを返済中であれば名義変更を行うことができません。
売買もしくは譲渡を行う前に、必ず自動車検査証の所有者名義を確認しましょう。もし所有者名義が第三者であれば、所有者名義を第三者から旧所有者に変更してもらってから交渉を進めましょう。
自動車保管場所証明書(車庫証明)はすぐに発行されない
一般的には「車庫証明」と呼んでいる自動車保管場所証明書とは、所有する車の保管場所を確保していることを証明するものです。あなたのお住まいの地域を管轄する警察署に申請して発行してもらいます。普通自動車は必須で、軽自動車はお住まいの地域によって必須か不要かに分かれます。新所有者が名義変更する車の保管場所を、きちんと確保していることを証明するために必要なのです。
自動車保管場所証明書が発行される手順ですが、まず警察署へ申請に行きます。数日後に警察が、申請された場所が車の保管に適切か現地に出向き、広さなどを実際に計測します。車の保管場所として認められれば、さらに数日後に自動車保管場所証明書が発行され、再度警察署へ取りに行く、という流れです。
申請する場所が自分の所有する土地であればいつでも申請に行けるのですが、借りている駐車場の場合には事前に管理会社や大家さんに連絡し、使用承諾書をもらっておく必要があります。また自動車保管場所証明書発行代として、いくらか支払わなければいけない場合もありますので費用がかかるのか、かかるならいくらなのかも事前に確認しておきましょう。
自賠責保険も名義変更を
車の名義変更が完了したら、自賠責保険の名義も変更しましょう。自賠責保険とは「強制保険」とも呼ばれている保険で、必ず加入しなければいけない車の保険です。自賠責保険は車検ごとに更新するように加入しているので、車検の時に名義変更しようと放置する人もいるようです。
しかし、それまでに事故を起こしてしまうと面倒になります。車を名義変更して所有したら、速やかに自賠責保険の名義も変更するようにしましょう。
まとめ
多くの人は車をディーラーや中古車販売店を利用して購入するため、名義変更に対応することはほとんどありません。名義変更が必要となっても代行業者に依頼すれば何も難しいことはありません。費用を安く抑えたい人やなんでも自分でやらないと気が済まない人は、この記事を参考に名義変更を行ってみてください。ただし、15日以内に完了しないといけませんから、気を付けてくださいね。