みなさんはこまめに車の状態をチェックしてますか?車には、日々ユーザーが実施する日常点検や法定点検、2年毎(初回は3年)の車検がありますが、法定点検は実施していない、という方もいるのではないでしょうか。この記事では、法定点検の基本や車検との違い、法定点検にかかる費用を解説していきます。正しい知識を身につけて安全安心なカーライフを送りましょう。
目次
法定点検とは
法定点検とは、道路運送車両法によって定められている点検整備のことをいいます。自家用車では、1年毎に実施する12ヶ月点検(1年点検)と、2年毎に行う24ヶ月点検(2年点検)があり、いずれも点検の実施が義務付けられています。
法定点検では、車が正常に走行できるかどうか、故障・劣化箇所が無いかなどを点検し、必要に応じて整備を行います。
法定点検は義務ではあるものの、実施しなくても、特に罰則・罰金はないため、ユーザーによっては車検のみを実施して、法定点検はしない方もいるようです。しかしながら、万一のトラブルによる重大事故を誘発させないためにも、法定点検もキッチリ受けておきましょう。
車検との違い
車検とは、自動車検査登録制度の略語で、車が保安基準を満たしているかをチェックする制度です。
例えば、車体のサイズが車検証に記載された寸法と大きく変わっていないか、排気ガスの濃度やマフラーの音量など、定められた基準から外れていないかを検査します。つまり、基準から外れてさえいなければ、ブレーキパッドの摩耗やオイルの減少があっても合格できるのが車検です。
決して安全を保障する検査ではないというのが車検と法定点検の大きな違いでしょう。
また、車検は、合格しない車、車検が切れた状態(無車検)で公道を走行した場合、30日の免停に加え、懲役6ヶ月以下または30万円以下の罰金、さらに違反点数6点と、重い処罰が科せられます。
うっかり忘れていましたでは済まない罰則・罰金なので、車検時期はしっかり確認しておきましょう。
法定点検の種類
法定点検には、3ヶ月点検、6ヶ月点検、1年点検、2年点検があり、自家用車にはこのうち1年点検と2年点検が義務付けられています。1年点検と2年点検では、検査項目に違いがあり、1年点検での検査項目+@が2年点検です。2年点検は車検と重なるタイミングになるので、車検と同時に実施するケースがほとんどでしょう。それぞれ、細かいところまで点検、整備を行うので、普段気付けない異常や故障の未然防止が期待できます。
3ヶ月点検と6ヶ月点検は、自家用の中・小型トラック、事業用のバス、トラックに義務付けられているものなので、一般の個人ユーザーは気にしなくていい点検です。
法定点検の実施項目
法定点検で実施される検査項目は、タイヤの摩耗などの走行装置やブレーキの効き具合、状態などの制動装置、電装装置など多くの箇所を点検します。
1年点検、2年点検で点検する項目や内容を一覧表にまとめました。
自家用車 法定点検項目一覧表
点検項目 | 内容 | 1年点検 | 2年点検 | |
かじ取り装置 (ステアリング) |
ハンドル | 操作具合 | 〇 | |
ギヤ・ボックス | 取り付けのゆるみ | 〇 | ||
ロッド・アーム類 | ゆるみ、がた、損傷 | 〇 | ||
ボールジョイントのダスト ブーツの亀裂や損傷 |
〇 | |||
かじ取り車輪 | ホイール・アライメント | 〇 | ||
パワーステアリング | ベルトの緩み、損傷 | 〇 | 〇 | |
オイル漏れ、オイルの量 | 〇 | |||
取り付けのゆるみ | 〇 | |||
制動装置 (ブレーキ) |
ブレーキ・ペダル | 遊び、踏み込み時のペダルと床板のすき間 | 〇 | 〇 |
ブレーキの効き | 〇 | 〇 | ||
駐車ブレーキ機構 | 引きしろ、踏みしろ | 〇 | 〇 | |
ブレーキの効き具合 | 〇 | 〇 | ||
ホース及びパイプ | 漏れ、損傷、取り付け状態 | 〇 | 〇 | |
マスタ・シリンダ、ホイール・シリンダ、ディスク・キャリパ | 液漏れ | 〇 | 〇 | |
機能、摩耗、損傷 | 〇 | |||
ブレーキ・ドラム、ブレーキ・シュー | ドラムとライニングとのすき間 | 〇 | 〇 | |
シューの摺動部、ライニングの摩耗 | 〇 | 〇 | ||
ドラムの摩耗、損傷 | 〇 | |||
ブレーキ、ディスク及びパッド | ディスクとパッドとのすき間 | 〇 | 〇 | |
パッドの摩耗 | 〇 | 〇 | ||
ディスクの摩耗、損傷 | 〇 | |||
走行装置 | ホイール | タイヤの状態 | 〇 | 〇 |
ホイール・ナット、ホイール・ボルトの緩み | 〇 | 〇 | ||
フロント・ホイール・ベアリングのがた | 〇 | |||
リヤ・ホイール・ベアリングのがた | 〇 | |||
緩衝装置 | サスペンションの取り付け部と連結部 | 緩み、がた、損傷 | 〇 | |
ショック・アブソーバー | 油漏れ、損傷 | 〇 | ||
動力伝達装置 | クラッチ | ペダルの遊び、切れたときの床板とのすき間 | 〇 | 〇 |
トランスミッション・トランスファー | オイル漏れ、オイル量 | 〇 | 〇 | |
プロペラシャフト、ドライブシャフト | 連結部の緩み | 〇 | 〇 | |
自在継手部のダスト・ブーツ亀裂、損傷 | 〇 | |||
デファレンシャル | オイル漏れ、オイル量 | 〇 | ||
電気装置 | 点火装置 | 点火プラグの状態 | 〇 | 〇 |
点火時期 | 〇 | 〇 | ||
ディストリビュータキャップの状態 | 〇 | 〇 | ||
バッテリ | ターミナル部の接続状態 | 〇 | 〇 | |
電気配線 | 接続部の緩み、損傷 | 〇 | ||
原動機 (エンジン) |
本体 | 排気の状態 | 〇 | 〇 |
エア・クリーナ・エレメントの状態 | 〇 | 〇 | ||
潤滑装置 | オイル漏れ | 〇 | 〇 | |
燃料装置 | 燃料漏れ | 〇 | ||
冷却装置 | ファン・ベルトの緩み、損傷 | 〇 | 〇 | |
水漏れ | 〇 | 〇 | ||
ばい煙、悪臭のあるガス、有害なガス等の発散防止装置 | ブローバイガス還元装置 | メターリング・バルブの状態 | 〇 | |
配管の損傷 | 〇 | |||
燃料蒸発ガス排出抑止装置 | 配管等の損傷 | 〇 | ||
チャコール・キャニスタの詰まり、損傷 | 〇 | |||
チェック・バルブの機能 | 〇 | |||
一酸化炭素等発散防止装置 | 触媒反応方式等排出ガス減少装置の取り付けの緩み、損傷 | 〇 | ||
二次空気供給装置の機能 | 〇 | |||
排気ガス再循環装置の機能 | 〇 | |||
減速時排気ガス減少装置の機能 | 〇 | |||
配管の損傷、取り付け状態 | 〇 | |||
エグゾースト・パイプとマフラー | 取り付け緩み、損傷 | 〇 | 〇 | |
マフラーの機能 | 〇 | |||
車枠(フレーム)、車体(ボディ) | 緩み、損傷 | 〇 | ||
その他 | 車載式故障装置の診断結果 | 〇 | 〇 |
一覧にしてみると、非常に多くの箇所を点検していることがわかりますね。どれも、走行上の安全面に直接影響するものです。相当な知識が必要なので、しっかりとプロに点検してもらうことをおすすめします。
法定点検にかかる費用
私たちが安心安全に車に乗るためにかかせない法定点検ですが、気になるのはその費用ではないでしょうか?
法定点検は、ディーラーやオートバックスなどのカー用品店、ガソリンスタンドや自動車整備工場などで実施できます。どこも、プロの整備士が点検しますが、費用はそれぞれ異なります。
それぞれ法定点検における費用を確認していきましょう。
ディーラー
自社の車だからこそ、整備士の知識が豊富なことと、メーカーであることによる安心感があります。また、ディーラーによっては、割引制度などもあるようです。
各メーカー、店舗、車種によって価格が異なりますが、7,000円〜20,000円程度が目安です。
例 トヨタカローラの場合(12ヶ月点検)
サイズ | 車種 | 料金 |
軽自動車 | ピクシス、コペンなど | 7,370円(消費税込) |
パッソサイズ | パッソ、ルーミーなど | 7,370円(消費税込) |
カローラサイズ | カローラ、アクアなど | 7,700円(消費税込) |
プリウスサイズ | プリウス、ヤリス クロスなど | 8,470円(消費税込) |
ノアサイズ | ノア、ヴォクシーなど | 9,240円(消費税込) |
アルファードサイズ | アルファード、ヴェルファイアなど | 10,010円(消費税込) |
点検時間の目安は、60分~です。また、車の状態によっては点検追加などで料金・時間が変動する可能性もあります。事前にディーラーへ点検予約を行うのと同時に見積り金額を出してもらうと安心です。
カー用品店
法定点検は、オートバックスやイエローハットなどのカー用品店でも、プロの整備士の手によって点検を依頼できます。
カー用品店で法定点検を受けるメリットは、オイルやバッテリーといった消耗品やパーツの交換が必要になった際、豊富な種類から選ぶことができ、ディーラーよりも安価で済むケースが多いことが挙げられます。中でもオートバックスでは、法定点検+消耗品の定期交換をパックにするなどのメンテナンスパックも用意されています。こうしたサービスを活用することで、維持費を抑えながら常に車のコンディションを保つことができますね。
費用の目安は、10,000〜20,000円程度です。車種によって異なるため、気になる場合は店舗に問い合わせてみましょう。
以下は、オートバックス メンテナンスパック「しっかり法定点検コース」の価格表です。
内容 | 車両クラス | 燃料区分 | 料金 |
法定点検+ ・オイル交換 ・オイルフィルター交換 ・ワイパーゴム交換 ・エアコンフィルター交換 |
軽自動車(660cc) | レギュラー | 24,500円(消費税込) |
小型車(1,800cc以下) | 25,500円(消費税込) | ||
中型車(2,500cc以下) | 26,500円(消費税込) | ||
大型車(2,500cc以上) | 27,500円(消費税込) |
この他にも価格を抑えた、法定点検+オイル交換のみのパックや、次回車検分まで含んでいるパックといった多彩なメニューがあります。
ガソリンスタンド
ガソリンスタンドは、給油のイメージしかない方もいるかと思いますが、タイヤ交換やオイル交換、バッテリー交換といった多くのピットサービスを提供しています。
給油ついでに依頼できるの点や、ディーラーやカー用品店よりも近くに店舗があることが多い点がメリットといえるでしょう。
費用の目安は、7,000~15,000円と他よりもリーズナブルな価格設定です。しかし、ガソリンスタンドでも車種や車の状態によっては価格が異なるので、依頼前に見積りを出してもらいましょう。
整備工場
各メーカー、車種の点検、修理などを請け負っている整備工場では、整備士の知識が豊富で技術力も比較的高く、工賃や部品交換などの費用がディーラーと比べると安価なことがメリットです。
一方、中々入りにくく、気軽に依頼しにくい点はデメリットといえるかもしれません。
費用の目安は5,000円~10,000円程度ですが、こちらも車種や追加作業によって変動があります。
法定点検の重要性
法定点検には車検と違って罰則・罰金がないことから、お金を払ってまで実施する必要がないのでは?と考える方もいるかと思います。
しかし、実施しないことが意外なところでペナルティとなったり、不利に働く場面があります。法定点検の重要性をしっかり確認しておきましょう。
トラブルの未然防止
車検は、保安基準を満たしているかの検査をするもので、安全性を保障するものではないとお伝えしました。そのため、法定点検を怠ったことで車のトラブルに気づけず、思わぬ故障に見舞われるリスクが少なからずあります。
法定点検の点検箇所リストのように細かな部分まで点検を行い、事前に異常が無いことを確認していることから、これを行わないことで異常を見過ごしてしまう可能性があります。
特に、ブレーキや走行部など、走行性能に直結する部分に不具合が起きていると、ある日突然車のコントロールが効かなくなり、大事故を起こしてしまう可能性も否定できません。
もちろん、すぐに壊れるような設計はされていないですし、法定点検を行ったから絶対大丈夫というワケではありませんが、こうしたリスクを事前に摘み取っておくこともユーザーの義務なのです。
事故時の法的責任が低減する可能性
法定点検をしっかり行っている場合、万が一車の不具合による事故(整備不良や故障)を起こした場合、ドライバーの過失割合が低減される可能性も。
法定点検は道路交通法で課されている義務であり、整備記録簿などを元にきちんと車の手入れを行っていることが確認されれば、それ以上の過失を問われないことが期待できます。
しかし、逆にこれらを怠っている場合は、整備をきちんとせずに危険な状態で車を走行させていたと判断されてしまうことも。
事故自体を起こさないことが前提ですが、交通社会の中では、自身がいくら気を付けていても、事故が起きてしまう可能性は否定できません。自分の身を守るためにも、日頃より車のメンテナンスには気を遣い、安全安心な運転を心掛けましょう。
メーカー保証の継続
車を購入した場合、3年間などのメーカー保証がセットになっていますが、このメーカー保証の多くは、法定点検の実施を条件としているケースが多いことは意外と知られていないようです。
例えば、トヨタでは以下のように記載されています。
お客様のおクルマが、メンテナンスノートに示す点検・整備がなされ、取扱書等にしたがった正しい使用・お手入れがなされた自動車である場合に、保証いたします。従いまして、次の事項を必ずお守りいただくようお願いいたします。守られていない場合は、保証修理をお断りすることがありますので、ご承知おきください。
1.取扱書などに示す取扱方法に従った正しい使用・お手入れ。
2.法令で定められた点検・整備(日常点検を含む)およびトヨタが指定する点検・整備の実施。
3.定期点検・整備の実施を記録したメンテナンスノートまたはその他の定期点検記録簿の保持。
4.メンテナンスノートおよび取扱書に示す定期交換部品の指定どおりの交換。
日産においても、以下のように記載されています。
【新車保証を受けるには】
法律で定められた点検整備を実施して下さい。(日常点検、法定点検、日産自動車が指定する点検)
日産自動車が指定する純正部品を使用して下さい。エンジンオイル・オイルフィルタ・A.T.F(オートマチックトランスミッションフルード)等
保証修理は日産販売会社または日産指定サービス工場のみ受けられます。
このように、保証を継続していくためには、法定点検は必要な事項であることがわかります。
まとめ
法定点検をこれまであまり重要視していなかった方にも、この記事を通して必要な点検であることがご理解いただけたでしょうか?車種によっては、割高になる可能性はあるものの、私たちが車を運転するために必要な点検であることは間違いありません。法定点検を受けることで、様々なトラブルが防止できるほか、売却時の査定額UPやメーカー保証の継続などメリットもあります。
これを機に、いままで法定点検を受けてこなかった方も、ぜひ実施していきましょう。
よくある質問
法定点検を受けなかった時は?
法定点検は義務づけられているものの、受けなかったからといって特にペナルティはありません。しかし、法定点検は車の安全性を確保するためにも必要な点検であり、これを受けずに車両故障による事故が発生した場合に、ドライバーへ罪を問われる可能性は十分にあります。また、査定への影響、メーカー保証の継続に必要な要素となってくるので、法定点検は実施することがベストです。
法定点検の検査時期は?
法定点検は、12ヶ月点検とよばれることから1年毎の周期での点検となります。また、2年目にはさらに項目を増やした点検となりますが、こちらは一般的に車検と同時期になることから、車検とあわせて実施するケースがほとんどです。点検時期は、フロントウインドウの左上の丸いシール(点検整備済みステッカー)に次回点検時期が記載されています。
自身で法定点検を実施できる?
法定点検を自身で行うことは、知識やスキル、工具を備えている方であれば可能です。法定点検項目一覧表に沿って実施すれば問題はありませんが、個人で実施するには少々難易度の高い点検です。目視点検のほか、下回りはジャッキアップした状態で車の下から確認する必要があります。ジャッキやウマといった工具も必要で、間違えた手順で作業を行えば作業中の事故に繋がる可能性もあります。
また、法定点検を実施したと証明する点検整備済みステッカーは国が認定した業者から発行されるものなので、自身での点検では発行されません。手間や時間、作業中の安全性などを考慮すると、専門の業者に一任するのがベストな選択ではないでしょうか。