軽油は、自動車や船舶などの動力源として広く使われる燃料の一種です。ガソリンと比較して、その特性や用途は異なります。本記事では、軽油の基本的な特性やガソリンとの違い、さらには税金に関するポイントに焦点を当て、理解しやすく解説します。
目次
軽油とは?
そもそも軽油とは何なのでしょうか。軽油はガソリンと同様に石油から作られる石油製品です。セルフ給油のガソリンスタンドでは、消防法によって定められた緑色のノズルから給油することができます。基本的に無色透明ですが、他のオイルと見分けるために、エメラルドグリーンに着色されていることもあります。
軽油の特徴
軽油はガソリンと同様に危険物(第4類危険物)として扱われます。軽油はさらに流動点の違いにより、特1号、1号、2号、3号、特3号の5種類に分類されています。これはJIS規格によって規定され、夏季は1号もしくは特1号、冬季は2号(寒冷地は3号、特3号)といったように、季節によって使い分けられています。
軽油が使われる車
軽油はガソリンと同様にガソリンスタンドで購入できます。ディーゼルエンジン用の車や機械の燃料として、大型のトラックやバス、ハイエースなどの商用バンやディーゼルエンジンを搭載した乗用車にも使用されます。
また、車以外にも鉄道や船舶、建設機械など、ディーゼルエンジンが搭載されている車両にも使用されます。
軽油と他のガソリンとの違い
ガソリンも軽油も石油から作られる石油製品ですが、そもそも何が違うのでしょうか。それぞれの特徴や使用用途の違いから解説していきます。
それぞれの特徴
軽油については前述のとおり、季節によって使い分けがされていたり、第4類危険物として扱われていたりしますが、ガソリンはどうでしょうか。ガソリンも同じ石油製品で第4類危険物として扱われます。しかし、軽油よりも引火点が低いため、ガソリンの方がより危険性が高いという違いがあります。軽油の引火点は45℃以上なのに対し、ガソリンはマイナス40℃以下とかなり低温でも引火する恐れがあります。
安全面を考慮し、自動車用ガソリンはオレンジ色に着色され、セルフスタンドでは給油を間違えないようにノズルの色もハイオクは黄色、レギュラーは赤色と法律で定められています。
また、ガソリンは必要に応じて添加剤が加えられます。アンチノック性や酸化安定性など使用用途によって要求される性能に調整され、アンチノック性を評価するオクタン価が96以上でハイオク、89以上でレギュラーガソリンになります。
使用用途の違い
軽油は、ディーゼルエンジンを搭載した車両に使用されるのに対し、ガソリンはガソリンエンジンを搭載した自動車や航空機に使用されます。
軽油を使うディーゼルエンジンは、点火装置を用いて燃料を着火させるガソリンエンジンと異なり、高圧で圧縮して軽油などの燃料を自己着火させる仕組みで動いているため、ガソリンよりも二酸化炭素の排出量が少ないことが特徴です。
ディーゼルエンジンは二酸化炭素排出量は少ない半面、粒子状物質(PM)や、窒素酸化物(NOx)を排出するため、PMのエンジンへの蓄積を緩和するためのコストが増加してしまうといったデメリットもあります。
軽油に関する税金
世の中の様々なものにかかる税金は、軽油についても例外ではありません。さらに、軽油ならではの税金も存在します。
軽油引取税
ガソリンに揮発油税が存在するのに対し、軽油には軽油引取税がかかります。
これは都道府県が徴収する地方税で、消費者へ軽油を販売する小売業者や小売店と取引を行う元売業者または特約業者に納税が義務付けられています。
この税金は軽油の量に対して課税され、1キロリットルにつき当分の間32,100円(※)と定められています。つまり、1リットルにつき32円10銭が軽油引取税となるわけです。軽油は船舶や農林業の機械の動力源に使用されることもあるため、使用される用途や機械によっては免税となる場合もあります。
※2023年12月時点の税率。本則は1キロリットルにつき15,000円。
参考資料:地方税制度|軽油引取税 – 総務省
石油石炭税
石油石炭税(石油税ともいわれます)は、国内で採取される原油や石炭、ガス状炭化水素、保税地域から引き取られる原油や石炭、石油製品、ガス状炭化水素に対して課税され、軽油やガソリンの場合は1キロリットルにつき2,800円(※)と定められています。つまり、1リットル当たり2.8円が石油石炭税となります。この石油石炭税は軽油やガソリンの他に石炭や天然ガスも課税対象となっており、鉄やセメントなどの原料として使われる石炭は、石炭以外の代替が不可能であることから、免税となる場合もあります。
※地球温暖化対策のための石油石炭税の税率の特例実施中の2023年12月時点の税率。本則は1キロリットルにつき2,040円。
参考資料:石油石炭税法
まとめ
ここまで軽油の特徴やガソリンとの違い、使用用途などを解説してきました。軽油もガソリンも同様に危険物ですが、引火点が違ったり、着色されている色が違ったりと、同じ石油製品でもかなり違いがありました。特に税金については、ガソリンには揮発油税がかかっているのに対して、軽油の場合は軽油引取税という地方税がかかっています。この軽油引取税は免税対象となる場合もあるので、気になる方は各都道府県のホームページなどで調べてみるとよいでしょう。
よくある質問
軽油を軽自動車に使っちゃダメなの?
軽油を同じ「軽」だからと、軽自動車に使ってしまわれる方がいると聞きますが、これは車両の重大な故障に繋がり、高額な修理費用が必要になってしまう場合。これは軽油とガソリンがそもそも違うものであることや、軽自動車に搭載されているエンジンがガソリンを燃料とするエンジンとして作られていることが要因です。軽自動車に軽油を給油するのは絶対にやめましょう。
もし間違って軽油を入れてしまったら
万が一軽油を入れてしまった場合、燃料タンクから軽油を抜かなければなりません。軽油は危険物であることや、燃料を抜くという作業は専門家でなければできないことから、ロードサービスを手配して修理工場に運ぶ必要があります。また、軽油を入れてエンジンをかけてそのまま走行を続けた場合、ガソリンと異なる燃焼方法である軽油は不完全燃焼を起こし、エンジン内部にススとなって残ってしまいます。このススはガソリンエンジンの点火プラグに付着したり、吸気や排気の口や管に溜まって塞いでしまうことから、エンジンが完全に停止してしまいます。こうなると、エンジンの分解洗浄や部品交換が必要となってくるため、高額な修理費用がかかってしまうでしょう。