自動車保険に加入する際には、必ず「等級」という言葉が出てきます。この耳慣れない言葉を聞くと誰もが、「等級って、一体どういう意味なの?」と首をかしげてしまうでしょう。車を購入したら必ず入るべき保険を賢く利用するために、自動車保険の等級についてや保険料との関係などを解説します。
自動車保険の等級について
自動車保険の等級とは、【ノンフリート等級別料率制度】のことを意味します。自動車保険にはフリート契約とノンフリート契約の2種類があります。ユーザーが所有する車1台ごとに加入するのがノンフリート契約、複数の車にまとめて加入するのがフリート(艦隊または船団という意味)契約です。
通常のユーザーが加入するのは、車1台ごとに加入するノンフリート契約です。他の保険会社への加入を含めて所有する車が9台以下ならば、ノンフリートで契約します。これに対し企業などの法人で10台以上の車を所有している場合はフリート契約を行い、所有するすべての車をまとめて保険に加入します。
ノンフリート契約では、加入者が支払う保険料について、無事故であった場合の割引や事故をした場合の割り増しについて、その金額を決定するための【ノンフリート等級別料率制度】が設定されています。
ノンフリート等級別料率制度
一般のユーザーが加入する自動車保険の等級とは、【ノンフリート等級別料率制度】のことで、この等級の違いによって、保険料が割引されたり割り増しされたりする仕組みです。ユーザーが自動車保険を契約する際や更新を行う場合に、このノンフリート等級によってその年の保険料が決定されます。
1~20等級まである
ノンフリート等級には、1等級から20等級までがあります。この等級の数字が高い(大きい)ほど保険料の割引率が高くなり、逆に数字が低く(小さく)なるに従って割り増しへと変わり、最低の1等級になるともっとも割増率が高くなります。
1~3等級は割増率適用
ノンフリート等級制度で、保険料が割増しに転じるのは3等級からです。3等級で+12%、2等級で+28%、1等級で+64%という保険料の割増しが適用されることになります。
4~20等級は割引率適用
これに対し、保険料が割引となるのは4等級以上です。ノンフリート等級で適用される、保険料の割引率は以下のようになります。
ノンフリート等級別料率制度の割引率
- 4等級:-2%
- 5等級:-13%
- 6等級:-19%
- 7等級:-30%(事故ありでは-20%)
- 8等級:-40%(事故ありでは-21%)
- 9等級:-43%(事故ありでは-22%)
- 10等級:-45%(事故ありでは-23%)
- 11等級:-47%(事故ありでは-25%)
- 12等級:-48%(事故ありでは-27%)
- 13等級:-49%(事故ありでは-29%)
- 14等級:-50%(事故ありでは-31%)
- 15等級:-51%(事故ありでは33%)
- 16等級:-52%(事故ありでは-36%)
- 17等級:-53%(事故ありでは-38%)
- 18等級:-54%(事故ありでは-40%)
- 19等級:-55%(事故ありでは-42%)
- 20等級:-63%(事故ありでは-44%)
※損害保険料率算出機構が定めた参考純率
はじめに保険加入時は6等級から
車を購入したユーザーが新規に自動車保険に加入する場合は、6等級からスタートします。またセカンドカーなど、2台目以降の車に自動車保険を契約する場合、ある一定の条件を満たしている場合は、6等級ではなく7等級からスタートすることが可能です。また6等級、7等級のいずれも、契約時の年齢条件によって保険料が変わります。
セカンドカーなどで7等級からスタートが可能な条件
- 1台目の契約が11等級
- 1台目、2台目以降の車がいずれも自家用である
- 2台目以降の記名被保険者、車の所有者が1台目と同じまたは、その配偶者や同居の親族であるなど。
年齢条件による保険料の違い
◇6等級の場合
- 全年齢補償:+28%
- 21歳以上補償:+3%
- 26歳以上補償:-9%
- 年齢条件対象外:+4%
◇7等級の場合
- 全年齢補償:+11%
- 21歳以上補償:-11%
- 26歳以上補償:-40%
- 年齢条件対象外:-39%
自動車保険の等級の上げ下げ
自動車保険に設定されたノンフリート等級料率制度では、契約中に発生したケースによって、更新時に等級が上下する場合があります。このような、自動車保険の等級の上げ下げについて説明します。
等級が上がる条件
自動車保険の更新時に等級が上がるのは、前年度に無事故であった場合です。その際は、更新時の等級が1つ上がります。前年にはじめて自動車保険に加入したなら、最初の年は6等級からスタートするため、2年目まで無事故で更新した場合は7等級になり、割引率が増えて保険料が安くなります。
等級が下がる条件
更新時に等級が下がるのは、前年度に事故を起こして保険を使った場合で、その際は事故1件につき3等級も下がってしまいます。前年が新規の6等級でスタートした場合は、1回事故を起こすと3等級ダウンの3等級となり、割引ではなく保険料が割増しになってしまうことに。
また、前年の契約が10等級以上で、事故後の更新で割引率の大きい7等級以上だった場合も、通常とは異なり事故有割引率が適用されます。この際は、割引率が大きくダウンしてしまうだけでなく、その後3年間は事故有割引率が適用されてしまうため、自動車保険では事故を起こした場合のデメリットが非常に大きいです。
2度以上の事故は事故有期間が長くなる
さらに、事故有割引率が適用されている期間中に再度事故を起こしてしまった場合は、その適用期間が精算されます。例えば、事故をした翌年から3年の事故有割引の適用が開始され、そこから1年後に事故をした時は、その時点からさらに3年の事故有割引適用期間が追加されます。結果として通算で4年も適用期間が続き、保険料が高くなってしまいます。
この精算期間は、通算6年が上限となりますが、事故をすればするだけ分が悪くなるのは間違いありません。当然ですが、たとえ保険に入っていても事故を起こさないことが望ましいでしょう。同じ等級が下がる場合でも、車両保険と搭乗者傷害保険、無保険車傷害保険のみを使用した場合は、事故1件につき1等級のダウン。事故有割引率は、1年間のみの適用となります。
事故の有無による自動車保険の等級
事故を起こすと自動車保険の等級が下がり、翌年の更新時に保険料が高くなってしまうデメリットがあります。そのため、車で事故を起こさないよう、安全運転を心がけることが何よりも大切です。事故をした場合の保険料がどうなるのかを、より詳しく知るために、事故と保険料の関係について説明します。
事故有と事故無で分類
車で事故を起こして自動車保険を使うと、ノンフリート等級が下がってしまいます。それだけではなく、同じ等級でも事故有の場合と無事故の場合で、保険料が大きく違ってくるため、注意が必要です。
◇無事故と事故有との自動車保険料の違い
例:前年度が10等級の場合
-
- 無事故
ノンフリート等級が1つアップし、10等級から11等級へ ⇒ 割引率が10等級の-45%から11等級の-47%へ=保険料が安くなる - 事故有
ノンフリート等級が事故1件につき3つもダウンし、10等級から7等級へ ⇒ 割引率が10等級の-45%から7等級の-30%へ ⇒ さらに事故有割引率の適用で、-20%まで大幅にダウン=保険料が高くなる。
- 無事故
さらに事故有の場合は、翌年の更新時まで無事故で等級が1つアップしても、事故をした翌年から3年間は事故有の割引率が適用され ⇒ 7等級から8等級に上がっても、割引率は通常の-40%から21%と大きくダウン ⇒さらにその翌年も事故有割引率が適用され ⇒ 無事故で等級が1つアップし9等級になっても、割引率は-43%ではなく-22%となる=無事故の場合に比べて大きな損をしてしまう。
このように、自動車保険では事故無と事故有で分類され、事故を起こすとそれだけ高い保険料を支払う結果になります。
長期契約で対策
車を運転すれば、自分がいくら安全運転を心がけていても、思わぬ不運に見舞われて事故を起こしてしまう場合があるでしょう。このような時に、事故によって等級や割引率が下がるなどのデメリットを回避する方法として、自動車保険を長期契約にする方法があります。
通常は1年ごとの契約を長くすることで、その間の契約更新がないため、事故を起こしても最初に支払った保険料から増額されることはありません。保険会社では、3年~7年の長期契約を取り扱っており、もしもの事故の時にも安心です。また長期契約による割引もあり、お得に自動車保険を利用できると人気です。
ただし、長期契約の場合も事故を起こしてしまうと、契約満了後の更新時には等級がダウンしてしまうため、注意しましょう。
自動車保険の等級に関する注意点
自動車保険の等級については、他にもいくつかの注意点があります。
保険を乗り換えても引き継がれる
自動車保険を他の保険会社へと乗り換えた場合、基本的にノンフリート等級はそのまま引き継がれます。今はTVなどで保険会社のCMが頻繁に流され、どの会社もお得な保険料で加入できると宣伝を行っています。誰もが「今加入しているところから保険会社を乗り換えたら、保険料が安くなるのでは?」と考えてしまうでしょう。
そこで気になるのが、現在加入している保険のノンフリート等級が、保険会社を変えた場合はどうなるのかということです。新規契約の場合は、6等級もしくは7等級からとなっていますが、等級は前の保険会社の時からそのまま引き継がれるため、等級が下がったり上がったりすることはありません。
保険会社を変えても、等級がダウンして割引率が下がることはなく、事故を起こして等級が下がっていた場合に、新規契約の6等級でイチからスタートすることもありません。
一定期間が開くと引き継ぎができない
自動車保険の契約期間中に、別の保険会社に乗り換える場合は、現在の等級は問題なく引継ぎされます。しかし、車を手放すなどして前の保険の契約終了時から一定期間が開いた場合は、等級の引継ぎができないことがあり、注意が必要です。
自動車保険では原則として、前の契約が終了してから次の契約を開始するまで、7日間以内でなければ、等級の引継ぎができないことになっています。このような場合には、加入していた保険会社に中断証明書を発行してもらうことで、次の保険契約時に等級を引き継ぐことが可能です。中断証明書があれば、最大で10年間等級を保存することができます。
中断証明書は、車の廃車や譲渡、海外への渡航といった理由により、長い間車に乗らなくなることを条件に発行が可能です。中断証明書を発行する条件は、以下のようになります。
◆中断証明書が発行可能な車の状況
- 廃車、他人への譲渡、返還がされている
- 車検証の有効期限が切れ、継続して車検を受けていない
- 一時的に自動車の所有を中止する一時抹消がされている
- 複数台の車を所有している場合、ある契約車両の廃車・譲渡・返還に伴い、契約車両を他の契約車両と入れ替えていること
- 契約車両が災害により滅失した場合
※海外へと渡航する場合は、上記1~5の条件は該当しません。
全労済の自動車に関する等級について
自動車保険は一般の保険会社だけでなく、共済組合の全労災やJA(農協)でも取り扱っています(自動車共済)。これらは一般の自動車保険と等級制度が異なるため、全労災のマイカー共済とJAのクルマスターについて説明します。
マイカー共済は最大22等級
全労災が取り扱うマイカー共済の特徴は、等級が最大で22等級まであることです。最大の22等級では-64%の値引きがあり、しかも一度事故を起こしても翌年の割引率が変わらないという、特典付きなのがメリット。
新規契約時には6等級からスタートし、1年後の更新時まで無事故っだった場合は、等級が1つアップするのは一般の自動車保険と同じです。契約中に事故を起こした場合は、事故ケースによって3等級もしくは1等級ダウンとなる場合があり、その場合は割引率が事故有の条件となります。事故有割引率の適用期間は、3等級ダウンでは3年、1等級ダウンでは1年です。
クルマスターは最大20等級
JA共催のクルマスターは最大で20等級まであり、最大割引率は-63%までです。1年後の更新時まで無事故の場合は、等級が1つずつアップし、事故を起こした時の等級ダウンなども一般の自動車保険と同じ。
ですがクルマスターだけのメリットもあり、自賠責保険とセットで対人賠償が-7%割引、ゴールド免許なら何と-12.5%もの割引、自動継続特約もあって-2%割引などがあります。ただし、ロードサービスに関しては、一般の保険会社の方がはるかに充実しており、念のためJAF(日本自動車連盟)にも加入しておいた方が良いでしょう。
まとめ
自動車保険の等級制度は、一見すると難しそうに聞こえますが、そうでもありません。等級制度がどのようなものかを知っておくことで、自動車保険をよりお得に利用できます。また自動車保険に加入したからと安心するのではなく、事故を起こすと保険料の割引率が下がるなど、デメリットが多いです。車に乗るなら、事故を避けるために、ぜひとも安全運転を心がけましょう。